CYBERABAD DAYS

サイバラバード・デイズ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

サイバラバード・デイズ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

21世紀中葉のインド未来史を描いた連作短編集。


題名がインド以外を感じられないほど香りが強いけど、直訳すると「電脳都市の日々」といったところ。
ロボット、ネットワーク、超AI、ナノテク……と科学技術が発達しても伝統や神話は根強く残り、いわゆるインドらしい雰囲気はそのまま残っている。しかし、インド文化に立脚した技術は、フィードバックされ、また新たな神々を作り出す。
その変容しながらも、猥雑さとバイタリティーは変わらぬインドで生活する人々を描く。


 収録作品
・「サンジーヴとロボット戦士」Sanjeev and Robotwallah
分離戦争まっただなかのインド。
ロボットが大好きなサンジーヴ。
村が壊滅し、都会に出ると、そこにはロボット戦士たちが。
彼らの雑用係になったが……
未来でも、日本はオタクカルチャーを輸出してるのね(笑)


・「カイル、川に行く」Kyle Meets the River
インド再建のためにやってきた技術者の息子カイル。
彼は現地の少年サリムと親友になるが……


・「暗殺者」The Dust Assassin
水を支配するアザド家とジョドラ家。
しかし、ジョドラ家はアザド家によって皆殺しに会う。
唯一生き残ったパドミニは、幼い頃から「お前は武器だ」と言いつけられてきたように、復讐を誓う。
作中にも出てくるように、アラビアンナイトのような印象を受ける作品。
欧米から見たエキゾチックさ、と言えなくもないかな。


・「花嫁募集中」An Eligible Boy
インドは、四対一という男女差。
公務員のジャスビールは花嫁募集中。
親友の作ってくれたAIのアドバイスのお陰で、美女とお近づきになるが……
未来のボリウッド映画の原作みたいで、幾つもの要素が詰まってる。
そんなわけで、主人公はラジニカーントに脳内補完(笑)
BLものでもあります。


・「花嫁募集中」The Little Goddess
近未来のネパール。
生きた女神となった五歳の少女。
しかし、血を流すと人間として俗世に戻らなければならない。
大人になった彼女は、神としての過去を恐れられ、結婚も出来ずにいた。
ある日、インドの神の如き新人類と結婚することになるが……
既読なんだけど、やはり面白いなぁ。
伝統とテクノロジーの融合により、新たな神話が形作られていく様はこれが一番強いかな。


・「ジンの花嫁」The Dinn’s Wife
ダンサーをしていたエシャは、水戦争の停戦を調整している超AIのラオに愛される。
二人は結婚するが……
これも既読だけど、なによりワールドコンの時だったなぁ、という思い出が強い。
正直、あの時は面白いと思わなかったんだけど、再読すると悪くないな。
それでも、ヒューゴー受賞というのにはピンと来ないけど。


・「ヴィシュヌと猫のサーカス」Vishnu at the Cat Circus
天才と長命をデザインされて生まれたヴィシュヌ。
普通の人間ながら、優秀な頭脳を持った兄が、世界を激変させようとしていることを知り、何とかしようとするが……
これまでインド文化に立脚したSFだったのが、量子多元世界的なSFに。
しかし、それ以上に激しい既読感!
パクったパクられたはないと思うけど『EDEN』*1を想起した。
似てない?


お気に入りは、「暗殺者」「花嫁募集中」「花嫁募集中」かな。