創刊号

翻訳ものメインのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌『ナイトランド』が創刊されるという知らせを耳にしたのは、もう半年ほど前。


いつ出るの? いや、そもそも出るの!?
と待ってたら、無事3月中に発売。

ナイトランド 創刊号

ナイトランド 創刊号

薄っ!
まぁ、この手の作品を訳してもらえるのはありがたいけど。


特集は『ラヴクラフトを継ぐ者たち』なんだけど、全体的にクトゥルー臭が漂う。
クトゥルーもの専門誌ではないんだよね?


収録作品
・「ルイジアナの魔犬」……スコッチ・カースン
ハリケーンの被災地に呼ばれた動物管理官。
古い教会に野犬に似た生き物がいて、それを生け捕りにしたいという。
オカルト話を吹きこまれ、一笑に付していたが……
魔物がサービス満点で、逆に薄く感じてしまった。
猟犬だけに絞った方が締まったような。


・「沼地を這うもの」……ティム・クーレン
雨宿りで宿を借りた植物学者。
そこの主は、魔術師だった祖先の召喚したものによる呪いを語り始める。
21世紀に入ってからの作品なのに、非常にクラシックな香りのする作品。
当事者だけでなく、少しでも触れたものさえ呪われてしまう人智を超えた存在が、ちゃんと古典を踏襲している。


・「ウェストという男」……グリン・バーラス&ロン・シフレット
ハーバート・ウェストと名乗る小柄な医師に雇われた、出所したばかりの男。
ウェストは研究をライバルが狙っているため、それを守ってほしいという。
一方、彼を探す探偵も付近に現れる。
ウェストの研究とは?


・「ダイヤー神父の手紙」……レイフ・マグレガー
書簡形式の短篇。
古生物マニアの神父が発見した恐竜と思しき化石。
トカゲのような身体、羽のようなヒレ、頭足類に見える頭……
エリザベス・ベアの「ショゴス開花」*1に感触が近い。
今号ではこれがお気に入り。


・「扉」……サイモン・ブリークン
断崖に封印されている巨大な扉。
それを見張るのが村人の勤め。
しかし、村に異変が起き始める……
得体のしれなさ、完全なる破滅、不可侵の呪い、という点ではこれが一番コズミック・ホラーっぽいか。


・「矮人族」……ロバート・E・ハワード
神話には、モデルになった存在がいたという兄に対して、怖いもの知らずの妹は、一晩石造りの廃墟で過ごしてみせるという。
しかし、夜中に荒地に向かった彼女に、不気味な気配が忍び寄る……
1ページ脱落って、演出かと思った(笑)
メタフィクションに毒されてるなぁ。


・「コールド・プリント」……ラムジー・キャンベル
SMなどの裏本を趣味とする男。
ある日、そんな本ばかりを揃えた店があると案内されると……


・「『魔道書ネクロノミコン』捏造の起源」……コリン・ウィルソン
エッセイ。
『魔道書ネクロノミコン』の裏話。
本は未読だけど、上手な偽書の作り方とも読めて、これだけでもかなり面白い。


・「怪奇の架け橋……『日本怪奇小説傑作集』から『Kaiki: Uncanny Tales from Japan』へ」……東雅夫
エッセイ。
『日本怪奇小説傑作集』の英訳事情。


【連載コラム】
・「私の偏愛する三つの怪奇幻想小説
第1回は、小説家、翻訳家の西崎憲氏。


・「Asian Horror Now (1)」
第1回は、台湾YAホラーの旗手、鐘霊。
向こうでも、ライトノベルは軽小説って書くのね(笑)
台湾小説事情はまるで知らないので、なかなか興味深かかった。
短篇はあまり売れないとか。


「金色の蜂蜜酒を飲みながら」
第1回は、クトゥルフジャンルのゲーム。


・「ファンタスティック・シネマ通信」
第1回は、すっかり忘れてた『THE THING』
今夏公開予定。


次回は6月。