THE LAND THAT NEVER WAS

幻の国を売った詐欺師

幻の国を売った詐欺師

詐欺師つながりで着手。

19世紀初頭のイギリス、中米(ホンジュラス、ニカラグァにまたがる)に架空の国「ポヤイス国」をでっち上げ、大々的に土地を売り出し、移民を募った男がいた。国債も売り出し、史上初めて、架空国の国債がロンドン証券取引所で売買されることになった。勇躍、船で移民たちが現地に到着してみると、そこにポヤイス国など影も形もなかった。この怪事件を引き起こしたのが、なんと「サー」の称号を持つグレガー・マグレガー将軍だった。あまりに壮大かつ、嘘のようなホントの話である。

Name:グレガー・マグレガー
Job:ポヤイス公
Ability:詐欺、使い込み、責任逃れ
というキャラの波乱万丈の物語。


架空の国をでっちあげ、その国債と土地を売りまくって莫大な金額を稼いだ、なんて話を聞くと、なんでそんな話を信じちゃったのかなぁ、と思う向きもあるかもしれないけど、21世紀現在でさえ、未だにM資金絡みや○○国復興基金で騙される人がいるんだから、とても馬鹿に出来る話ではない。


このグレガー・マグレガーなる人物、ある種努力を惜しまない天才で、当時のイギリスは投資バブルで、かつラテンアメリカバブルが到来していて、その時流に見事に乗ることに成功。さらに、数百ページにもわたるポヤイスのパンフレットを捏造する手の込みよう。また、口がうまいことに加え、非常にカリスマ性があったのも事実のようで、口八丁手八丁で金を集め、あとはトンズラするも、再び融資してしまう人や彼を最後まで擁護する人も少なくなかったとか。


三部構成になっていて、面白いのは、移民たちがポヤイス(のはずの場所)に着いてしまうパート。
無論、そこにはパンフレットに書かれていた町などなく、荒地が広がる。中流階級は完全にやる気を失い、下層階級は指示を与えられることが普通のため、リーダーがまず動くべきだとして、自発的に行動しない。数少ない人だけが家などを作るも、グレガー・マグレガーを信じてそこから動こうとしない。
果たして、彼らの運命は?
一方、グレガー・マグレガーの軍人時代などはちょっと退屈。


投資バブルは常に繰り返され、200年前も全く同じような結末。
『珈琲相場師』*1を副読本とすることで、当時のイギリスの投資熱が感じられると思う。