BITTER ANGELS

エラスムスの迷宮 (ハヤカワ文庫SF)

エラスムスの迷宮 (ハヤカワ文庫SF)

ミリっぽかったんだけど、ディック賞受賞ということなんで着手。

地球を中心とする人類居住星域パクス・ソラリス。その周縁部に位置し、負債奴隷制を基盤とするエラスムス星系は、地球統一政府軍守護隊によって、戦争勃発の危険がもっとも高いホット・スポットに認定された。そんななか、守護隊のもと野戦指揮官テレーズは、現場復帰を依頼される。戦争の危機を回避し、盟友ビアンカの謎の死の真相を明らかにすべく、テレーズは権謀術数渦巻く迷宮と化したエラスムス星系へと向かうが!?

聞いたことない作者だなぁ、と思ったらサラ・ゼッテルの変名でした。懐かしい。


あらすじの段階でピンと来なかったんだけど、結局最後までハマれず。


設定を語らずに、固有名詞を出しながら物語を進めていくことによって、その世界に没入させる作品はあるけど、これはそれがまるで悪い方に作用している小説。
「聖人」って、しばらく誰を指しているのか全くわからなかった。
陰謀を巡る物語に対して、舞台設定がよくわからないのは、そちらに気を取られちゃうからマイナスだと思うんだけどなぁ。
また、陰謀が渦巻き、誰も信じられないという展開だから、各人の視点で語られていくのもあまりそぐわない気がする。陰謀に巻き込まれていく焦燥感、黒幕の全能感、すべてが明らかになった時の爽快感がどうにも薄い。


テレーズよりも、シリみたいなキャラを主人公に据えたほうが悪夢感、朦朧感は増したはずだけど、焦点はそこではないのかなぁ。
平和について描きたかった、と言っているけど、圧倒的な技術をもって、他星系を監視するって、いやでもアメリカを想起させるよなぁ。他星系が戦争を起こそうとしているという情報を捏造し、それを口実に攻め込んでいるようにも見える。
余計な口出ししなければいいのに、そのつけを主人公が払わされているのもなぁ。


色々とすっきりしない作品。