THE TAIN
- 作者: キアラン・カーソン,栩木伸明
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2011/12/21
- メディア: 単行本
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夫である王と財産比べをして負けたコナハト国女王メーヴは、夫が持っている素晴らしい雄牛に匹敵する、アルスター国はクアルンゲの褐色の雄牛を奪うべく、 大軍勢を招集した。一方迎え撃つアルスター国では、呪いのせいで男たちは戦うことがかなわず、十七歳の若き英雄クー・フリンが、たったひとりで大軍相手に 奮闘していた。アイルランドのイリアスとも言われる伝説を『琥珀捕り』の著者、詩人カーソンが語った、血湧き肉躍る英雄譚。
まず、読もうと思ってる人に注意したいのは、小説ではないこと。
アイルランド神話の英雄譚『トーイン』を、キアラン・カーソンが英訳したものの日本語訳。だから知らないで、これまでのような作品を期待していると、かなり肩透かしを受けると思う。
しかし、その分、アイルランド成分は十二分に摂れる(笑)
神話ならではの定型の言い回し、繰り返しの描写、特有の美辞麗句に辟易しちゃうと、とたんに読む気が低下すると思うけど、それが平気なら、その先には、過剰なまでのスプラッタパンクが待っている。
戦士だろうが、洗濯女だろうが、容赦なく耳からの味噌吹き出しますよ。
無双シリーズも真っ青のクー・フリンの無敵っぷり。一薙ぎで、首チョンパの10や20は当たり前。
必殺の武器ガイ・ボルガは、最近のゴア描写にも匹敵する残酷さ。
それらが惜しげも無く次々と披露される。
髭も生えていないような、わんぱく美少年のクー・フリンが異形に変身する描写も迫力がある。北欧神話のベルセルクと根っこは一緒なのかしら? ただ、発作で変身しちゃうのが違うけど。てんかん発作とかの神話的表現なのかね?
展開も、発端となった牡牛を巡るやりとり、クー・フリンの幼年期、ゲリラ戦、合戦、だまし討ち、親友との一騎打ち、など意外に飽きさせない。
また、キャラクターも名乗っては殺されていく血なまぐささの中、クー・フリンをちびクーと呼ぶ戦車の御者とのコンビはなかなかユーモラス。
個人的には「クー・フリンとフェル・ディアズの決闘」「アルスター軍集結」の章がお気に入り。
神話に興味があるなら、長い注釈も楽しめると思う。
CLANNAD*3なんか聴きながら読むのもオススメ。