JANE EYRE

ジェイン・エア(上) (光文社古典新訳文庫)

ジェイン・エア(上) (光文社古典新訳文庫)

ジェイン・エア(下) (光文社古典新訳文庫)

ジェイン・エア(下) (光文社古典新訳文庫)

ロマンスを語る上で避けては通れない古典。ようやく着手。

幼くして両親を亡くしたジェイン・エアは、引き取られた伯母の家で疎まれ、寄宿学校に預けられる。そこで心を通わせられる人々と出会ったジェインは、8年間を過ごした後、自立を決意。家庭教師として出向いた館で主のロチェスターと出会うのだった。ジェインの運命の扉が開かれた。
少女・アデルの家庭教師として生活するうちに、ジェインとロチェスターは、お互いの中にある情熱、優しさ、聡明さに気づき惹かれ合う。愛を深めていく二人。だが、運命は過酷な試練をジェインに用意していた。苦悩の果て、二人に訪れた結末は……。究極の愛は結実するのか!?

結論から言うと、王道ゆえに古びない、今でも鑑賞に耐えうる「おはなし」ですよ。
ラブロマ、ラブコメの原形が見て取れ、個人的には『キャンディ・キャンディ*1に脳内補完。これを踏まえて、『エマ』*2を読み直すのもいいかな。
特に、パンをくわえて慌てて飛び出したら、曲がり角でいけ好かない男子と衝突! 学校に着いてみたら、転校生はなんと嫌なアイツ……の原形が『ジェイン・エア』に見れたことは大層な収穫。
さらに、ジェインもロチェスターツンデレという、高等テクニック!(笑)


また、キリスト教ソフトをインストールされているジェインの、まどろっこしい一人称が続く中で、屋敷の中に何かがいる、というゴシックホラー的要素が非常にいいアクセントであり、強い牽引力になっている。その存在の最期は完全なモンスター映画(笑)
キリスト教はやはり前提で、セント=ジョンの言動は、真面目・堅物を超えて、狂気すら見える。


ホントにロマンスの教科書的作品で楽しめるんだけど、小説としては巧くない。
(当時としては)強い女性像が、一人称で語られているから、その良さが出ていると思う。だけど、その反面、幼少時に閉じ込められたトラウマがずっと残ったと語っているくせに、後でそれについてまるで触れられていなかったり、一人称だからこそ、マイナスになってしまっている部分が気になる。
また、ロチェスター西インド諸島から逃げてきたのと対になるように、ジェインがセント=ジョンとインドを目指したり、セント=ジョンの信仰とバーサの淫乱や嫉妬など、鏡合わせになっている構造なんだけど、そこに深みがないのが残念。


とはいえ、ロマンスの一般教養としてオススメ。
いや、ロマンスを語るつもりはないんだけど。