WALKING DEAD

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド

同名ドラマの原作コミック。


今、『DEAD ISLAND』*1やってんだけど、アメリカ人はゾンビ好きだよなぁ。
巨大ショッピングモールに死体が歩き回るというヴィジュアルは、現代アメリカが唯一持ったオリジナル神話だからなんだろうね。
その神話に加えられる、新たな傑作。


警官の主人公が昏睡から目を覚ますシーンから物語は始まる。
なぜか周りは荒れ果て、ゾンビが徘徊している。
いったい、眠っている間に何が? 


ゾンビハザードものにおいて、主人公は否応なくサバイバーにならざるをえないんだけど、彼は同時に物語世界のナビゲーターでもあり、突然その異常な世界に投げ込まれるという点では読者と視点が近いのが秀逸。
一般人なんだから原因に簡単にたどり着けるはずがなく、しかし、生きていかなくてはならない。でも、これは現実世界でも同じことで、ほとんどの人間は社会情勢に従うしかなく、それでも生活を送っていかなくてはならないんだよね。
さらに、善意は簡単に悪意(ゾンビ)に覆され、仲間は唐突に食い殺されてしまう。しかし、ゾンビに襲われるからショッキングだけど、死は日常でも、前兆なく、平等に振りかかるんだよね。


この現実からのシフトが、ゾンビものが廃れない原因なのかな。


最近、ゾンビものの訳が多いけど、この作品が他と大きく違うのは長編ということ。翻訳版は、原著の3巻までの合本。でも、全然終わっていない。だから、死者が蘇る理由は今のところわからない。


WORLD WAR Z*2がオーラルヒストリーの積み重ねによって、ゾンビそのものの登場が少ないのに世界的なゾンビ禍の表現に成功しているのに対して、こちらは個人のミニマムな視点から丁寧に描くことによって、世界の崩壊を顕にしている。
ゾンビジャンルは、アンビバレントだけど、ゾンビになった理由が見たいわけじゃなく、サバイバルが見たいんだよね。
これは、まさに長編だからこその強みで、1時間チョイでスーパーマーケットに到着しない(笑)。安息の地にたどり着くまで、彼らは呪われたかのように彷徨うことになり、その間、物資が乏しくなり、仲間は減っていく。多かれ少なかれ、キャラクターが狂気に陥る様が丹念に描かれている。


ゾンビ設定に真新しさはないけど、臭いを追ってくるというのは意外に珍しいか?
また、ゾンビ化する理由を誤認していたことを知った時の絶望。これは終りなき物語で、真の世界の変容を表していて見事。


絵は、カラーのイメージが強いアメコミだけど、これはモノクロ。
モノクロだからこそ、死体ではなく、生者に注目できるようになっているんだけど、正直、なかなかキャラクターの見分けがつかない(笑)。


物語は、いいところでおしまい。次も是非翻訳を!
ドラマは未見なんだけど、原作の沿ってるの?


ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』がパブリックドメインというのが意外。