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アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う (英国パラソル奇譚)

『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』*1の続き。シリーズ第2巻。

異界族の存在を受け入れた19世紀のロンドン。この地で突然人狼や吸血鬼が牙を失って死すべき人間となり、幽霊たちが消滅する現象がおきた。原因は科学兵器か疫病か、あるいは反異界族の陰謀か。疑われたアレクシア・マコン伯爵夫人は謎を解くため、海軍帰還兵で賑わう霧の都から、未開の地スコットランドへと飛ぶ――ヴィクトリア朝の格式とスチームパンクのガジェットに囲まれて、個性豊かな面々が織りなす懐古冒険奇譚

スチームパンクと呼ぶには、あまりにガジェットが少なかった前作に比べ、今回は飛行船に加え、専用の改造パラソルも登場。しかも、男装の美人発明家つき。
エーテル通信機は、ちょっとハイテクすぎるような気もするけど……


異界族の能力を消し去ってしまう謎の現象と陰謀もなかなかキャッチー。
これまで、単なる好奇心旺盛なオールドミスでしかなかったアレクシアは、今回からは自分の好奇心を満たすだけの権力を持ち、自由に国内を駆けまわる。しかし、うるさい母とアイヴィの帽子だけはどうにもならないのが、シリーズものならではのお約束で楽しい。
アレクシアの魅力による牽引力は前作よりも強くなっている。彼女が、バッスルスカートを引っ掛けながら奮闘する姿が目に浮かぶ。「キャ〜! ゴキブリ!」なんて、翻訳ものであまり見かけたことないような……。
また、マコン卿の過去が語られるだけでなく、アレクシアの父の影もちらつき始める。


前回以上にロマンスもパワーアップ。
報われない愛、百合展開、そして夫婦の危機……
ヴィクトリア朝らしからぬHOTな濡れ場はもとより、パラロマとは違った、現代的な恋愛をねじ込んだ具合を楽しむべき小説だと認識。その辺では、もうちょいマダム・ルフォーに頑張って欲しかったな。
ラストは色んな意味で残酷で、まさにクリフハンガー
原題のように、マコン卿の頑固な性格と旧弊は変えられないのか!?


3巻も訳されることを、切に願います。