Adjustment Team and Other Stories
アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)
- 作者: フィリップ・K・ディック,大森望,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/04/30
- メディア: 文庫
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表題作の映画公開に合わせた日本オリジナル短篇集。
毎度お叱りを受け、取り敢えず短篇集読め、と言われ続けてきたので着手。
収録作品
- 「アジャストメント」Adjustment Team
- 「ルーグ」Roog
- 「ウーブ身重く横たわるの」Beyond Lies the Wub
- 「にせもの」Impostor
- 「くずれてしまえ」Pay for the Printer
- 「消耗員」Expendable
- 「おお! ブローベルとなりて」Oh, To Be a Blobel !
- 「ぶざまなオルフェウス」Orpheus with Clay Feet
- 「父祖の信仰」Faith of Our Fathers
- 「電気蟻」The Electric Ant
- 「凍った旅」The Frozen Journey
- 「さよなら、ヴィンセント」Goodbye, Vincent
- 「人間とアンドロイドと機械」Man, Android and Machine
「さよなら、ヴィンセント」のみ初訳で、他はさんざん読んできたよ、という方も多いだろうけど、個人的にはほとんど初読なので、普通にSF短篇、奇想短篇として、発表年代を考えても古びておらず面白かったですよ。
ただ、ディック的と称される精神病的、妄想的世界は、前後逆になってるのはわかるけど、21世紀現在では使い古されちゃってるんだよね。だから、その辺の驚きはないので、80年代に読んだ時に受けたであろう衝撃は全くないので勿体無いことしたな。まぁ、長篇読んだらまた違うのかも知れないけど。
だから、それ以外の要素で楽しむとしたら、結婚するな、ということですよ(笑)。「アジャストメント」で、事実を妻に話せば病気だと疑われ、病気という意見を受け入れれば浮気を疑われ、どうすればいいのよ。あと、ロボット精神科医に対する悪意といったら(笑)
また、本物と偽物(複製)というテーマは根源的なもので、見分けも証明も出来ない偽物への、息が詰まる様な強迫性はディックならではなのかな。「くずれてしまえ」のラストは感動。
お気に入りは、「アジャストメント」「にせもの」「くずれてしまえ」「電気蟻」「凍った旅」あたり。
「アジャストメント」はスタージョンの「昨日は月曜日だった」*1に似てるんだけど、ディックに比べると、彼の方は病的なものは感じないなぁ。
「電気蟻」はチャンの「息吹」*2がインスパイアされた作品ということで読みたかったんだけど、なるほど。自分の証明と世界の認識が、現実を超越する妄想として繰り込まれてしまう様は、チャンにはない不気味さが魅力。
「人間とアンドロイドと機械」は講演録なんだけど、一番怖いかも。こいつ、正気!?
未訳短編があと二つあるようなので、最低2冊は出るのかな? 短篇集未収録作もあるから、それも入れてくれればいいのに。