FROZEN

人体冷凍  不死販売財団の恐怖

人体冷凍 不死販売財団の恐怖

『人体冷凍 不死販売財団の恐怖』ラリー・ジョンソン&スコット・バルディガ〈講談社
キッチュな邦題がついてるけど、実話。

好奇心と好待遇に惹かれて、転職を決意したロサンゼルス在住の救命救急士、ラリー。だが、新たに選んだ職場は、人体の冷凍保存と未来での復活を狂信する科学カルト財団だった。人体冷凍保存術という“儀式”のインチキ、永遠の生命を信じるマッド・サイエンティストの同僚たち、そして、強引に首を切断するなど、思わず目を覆いたくなるような、杜撰で血まみれの遺体保存オペレーション。「ラリー、冷凍されている間は彼等は死んではいない。生きているんだ!」組織の実態を知ったラリーは、やがて告発を決意するのだが・・・・・・「スティーブン・キングよりも怖い」と、アメリカ全土を震撼させた戦慄の実話ホラー。

チャールズ・プラットって、今何やってるか知ってる? 人体冷凍財団の責任者やってるんだよ! 
登場人物紹介の時点でのけぞりましたよ。あのチャールズ・プラットだよね? 本書を読む限りでは、かなりの変わり者なんだけど、前からそうだったの?
……と思ったら、SFM1995年7月号にエッセイが掲載されていた。
88〜89年頃の話で、ベンフォードに話を聞いて行っている。本書でも挙動不審の天才と描写されるマイケル・ペリーはプラットの目にもやはり変わり者として写っていて、案内をしてくれるのは様々な疑惑に関係するマイケル・ダーウィン
ラリー・ジョンソンの告発の契機の一つになるドーラ事件について、ここでも紙幅が費やされているにもかかわらず、プラットは批判的に捉えていないのが複雑な気分に。
当時は冗談交じりのエッセイに読めたかも知れないけど、今となっては……


SF的ショックで、先にチャールズ・プラットのことばかりになってしまいました。
閑話休題


前半は医療版『ポリスアカデミー』で、後半は『悪魔の追跡』*1という感じ。
プラットのエッセイでは、「きちんとした組織ときちんとした経営と高度な医学的設備」を有していると書いているけど、少なくともこの本の中では、その全てが逆の状態。あまりの酷さにドタバタコメディにしか見えない。
個人的には、冷凍からの復活なんてありえない、なんて批判はおかしいと思ってる(本書でも告発の理由はそれではない)。遠未来で可能性が0とは言い切れないし、それを信じるのも自由。
ただ、ここに出てくる同僚は、全員が人体冷凍保存術のまさに"信者"。未来まで保管してもらい、凍って破壊された脳みそを元通りに解凍し、切断した胴体もクローニングで再生してくれるだろう、というのはえらく他人任せの信心。
また、単なるビジネスと割り切ってるのならいいんだけど、信じているのにあまりに杜撰な処理と管理は理解出来ない。会員の遺体が炎天下で放置され、腐臭を放ってるとか、血液が抜けらないとか、薬剤が全て期限切れとか。そのアイコン的なアイテムがツナ缶。これは読んで確かめてみて。
せめて、冷凍処置は真面目にやって欲しいよなぁ。


告発の理由は、国民的英雄テッド・ウィリアムズの冷凍処置をめぐる疑惑と、早く冷凍するためにまだ息のある会員を殺したという疑惑。それに加えて、廃棄物処理などの衛生的な問題。
告発後、全米にいる会員に、作者夫婦は狙われることになり……


こういう団体があるのは知ってたけど、もっと面白おかしい疑似科学団体かと思いきや、こんなにドロドロした内幕だったとは。


プラットのエッセイも「Freeze !」という題で、正反対の内容なのに、同じような題名になるとは。