WOMAN

音もなく少女は (文春文庫)

音もなく少女は (文春文庫)

『音もなく少女は』ボストン・テラン〈文春文庫テ12-4〉

貧困家庭に生まれた耳の聴こえない娘イヴ。暴君のような父親のもとでの生活から彼女を救ったのは孤高の女フラン。だが運命は非情で………。いや、本書の美点はあらすじでは伝わらない。ここにあるのは悲しみと不運に甘んじることをよしとせぬ女たちの凛々しい姿だ。静かに、熱く、大いなる感動をもたらす
傑作。

いい邦題だと思うけど、その内容は原題の一語が全てを表していて、まさに力強い女性たちの物語。その前では、あらゆる男は不幸を運んでくる存在でしかない。だからこそ、彼女たちは自分の足で人生を歩もうとする。
聴覚がないというハンデを補うに余りある、イヴの圧倒的な精神の強さ。その耳が不自由なことがきっかけとなって、フラン、イヴ、ミミ、と血はつながっていなくとも、母から娘へと遺伝していく魂。
我が子を守ろうとする魂の輝き。冒頭からフランが大きな役割を演じることは分かるけど、それよりも、夫に服従し続けてきたイヴの母親が最後に見せる強さが感動的。