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『宇宙飛行士オモン・ラー』ヴィクトル・ペレーヴィン群像社ライブラリー 25P-6〉

宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)

宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)

ペレーヴィン最新作。

うすよごれた地上の現実がいやになったら宇宙に飛び出そう! 子供の頃から月にあこがれて宇宙飛行士になったソ連の若者オモンに下された命令は、帰ることのできない月への特攻飛行! アメリカのアポロが着陸したのが月の表なら、ソ連のオモンは月の裏側をめざす! 宇宙開発の競争なんてどうせ人間の妄想の産物にすぎないのさ!? だからロケットで月に行った英雄はいまも必死に自転車をこぎつづけてる! ロシアのベストセラー作家ペレーヴィンが描く地上のスペース・ファンタジー

まず、題名からして怪しげで、そのキッチュさにそそられる(笑) そして、読み進めていき、人力!? というツッコミにすべてが集約。
カミカゼ宇宙飛行士ということで『カナシマ博士の月の庭園』を思い出したんだけど、大きく違うのは、こちらは完全に自虐。西側(という呼称も古いけど)のイメージする旧共産圏ネタで畳み掛けてくる様子は、ハルムスと続けて読んだ身としては、時代は変わったんだなぁと感慨しみじみ。個人的にはクマの着ぐるみの森番のエピソードが好きなんだけど、本当にやってそうなんだよね。それを、現代ロシア作家が「いかにもありそうな話」として創っているのか、それともペレストロイカ以前の残響なのか、ちょっと考えちゃう。
ファンタジーをリアルに見せるため、現実を犠牲にする残酷な物語にもかかわらず、語り口はどこかコミカル。
ラストの幻視(?)は個人的にはイマイチ……