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樹海伝説

樹海伝説

『樹海伝説』マイクル・ビショップ〈集英社
集英社WORLD SFかと思っていたら、マークはついてないのね。

辺境惑星ボスク・ヴェルトの樹海に住む霊長類アサディ族の生態を研究していた異星人類学者イーガン・チェイニーは、ひとり樹海の中にはいり、アサディ族とともに140日を過ごした。そこから彼がもち帰ったのは、高度な科学文明の存在を示す謎のアイブックと、アサディ族の衝撃的な死と指名の儀式の詳細をしるしたフィールド・ノートだった。しかし、チェイニーはそのすべてを否定し、失踪してしまう。六年後、チェイニーの娘でやはり人類学者のエレジー・キャザーが、父の生存を信じ、アサディ族の秘密を解くために訪れる。チェイニーの同僚として、残されたフィールド・ノートを公表したトマス・ベネディクトは、ふたたびこの若い女性学者とともに樹海にはいるのだが……。

目の色を高速で変えて会話するため、地球人が一切コミュニケーションできないアサディ族。長期間彼らの中で過ごしレポートを残したチェイニー。そして、それを編集したベネディクト。
信用できない種族を調査した信用できないレポートを編纂した信用できない語り手、というのを期待すると肩すかし。
人類学SFとはよく言ったもので、アサディ族の生態と調査がえんえんと描かれている。
アサディ族の世界や、チェイニーのレポートの中にしか現れない建築物などかなり面白いんだけど、話がイマイチなんだよなぁ。人間には全く意味不明の彼らの行動に対する解釈は全て推測に過ぎず、それはそれでいいんだけど、そこに至る飛躍がちょっと唐突な印象。チェイニーが自分の発見を否定した理由もわからんし。
それとも、語られる事柄は全て事実で、その宇宙人類学を論じているというスタンス?


7月はツールなんで、ただでさえ少ない読書量が絶賛減少中。