SALMON FISHING IN THE YEMEN
- 作者: ポールトーディ,Paul Torday,小竹由美子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2009/04
- メディア: 単行本
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EX LIBRIS第二弾!
真面目な水産学者のフレッドに協力を要請されたイエメン鮭プロジェクト。鮭釣りに、信仰にも似た熱意を持つイエメンの富豪が、故国で鮭釣ができるようにして欲しいというのだ。突拍子もない計画に断るフレッドだが、ことはイギリス政府を巻き込み、どんどん大きくなっていく。着々と進むプロジェクト。富豪にも心酔したフレッドは、計画の成功も信じるようになるが……
ジーザス・サン (エクス・リブリス)とはうって変わってユーモラス。「イエメン鮭プロジェクト」って言葉だけでもう楽しそう。
書簡やインタビュー形式で構成されていて、リーダビリティはかなりよくて一気読み。でも、そのベースに流れているのはシニカルで、黒い笑い。明るい文章とは裏腹に、最初から不穏な結末の気配が漂っている。
物語のテーマは相互理解・不理解。個人、夫婦、国家、文化……完全に理解し合うことは不可能だけど、それを含めて相手を認められるようになって始めて、人は成長できる。それができない、戯画的に描かれた官僚の姿は吐き気を催すほどで、そういう意味では広報官のマクスウェルが主人公。彼の「プライズ・フォー・ザ・ピープル」は最高に最悪。
作者の他の作品も読みたくなった。オススメ。