Midnight by the Morphy Watch and other stories

モーフィー時計の午前零時

モーフィー時計の午前零時

『モーフィー時計の午前零時』若島正・編〈国書刊行会
チェス小説の日本オリジナルアンソロジー

 収録作品
・「モーフィー時計の午前零時」…… フリッツ・ライバー
・「みんなで抗議を!」…… ジャック・リッチー
・「毒を盛られたポーン」…… ヘンリイ・スレッサー
・「シャム猫」…… フレドリック・ブラウン
・「素晴らしき真鍮自動チェス機械」…… ジーン・ウルフ
・「ユニコーン・ヴァリエーション」…… ロジャー・ゼラズニイ
・「必殺の新戦法」…… ヴィクター・コントスキー
・「ゴセッジ=ヴァーデビディアン往復書簡」…… ウディ・アレン
・「TDF チェス世界チャンピオン戦」…… ジュリアン・バーンズ
・「マスター・ヤコブソン」…… ティム・クラッベ
・「去年の冬、マイアミで」…… ジェイムズ・カプラン

チェスの物語ではなく、チェスにとりつかれた人々の物語。……この二つはイコールか(笑)


お気に入りは、
・「みんなで抗議を!」…… ジャック・リッチー
 高速道路建設に反対している男。
 彼は、建設会社に関係がある人間が事故死するたびに、
 自分が殺したという投書を送りつけていたが……


・「毒を盛られたポーン」…… ヘンリイ・スレッサー
 通信対戦でチャンピオンに一度も勝ったことがない男。
 すでに97敗しており、100勝で止めると相手は言ってきた。
 なんとしてでも勝ちたい彼は、グランドマスターの通信対戦の広告を見つけた……
 リッチーとかスレッサーは面白いんだけど、やはりアンソロジーで一つ二つ読むのがちょうどいいなぁ。


・「ユニコーン・ヴァリエーション」…… ロジャー・ゼラズニイ
 いいプレイヤーなのだが、緊張でここぞと言うときに調子を落とす男。
 荒れ果てた小屋で何気なく駒を並べていると、そこにユニコーンが現れる。
 ユニコーンは人類の存亡を賭けて、ゲームをしようと言ってきた。
 なんか、思いついたのを一気に書き上げただけの感じがするんだけど、
 かなりにぎやかで、それなりに引き締まってるのはゼラズニイなのかなぁ。
 登場人物達がひじょうに楽しそう。


・「必殺の新戦法」…… ヴィクター・コントスキー
 フォン・グームの新戦法は、どんなチェス書にも載っていない。
 その正体は?


・「ゴセッジ=ヴァーデビディアン往復書簡」…… ウディ・アレン
 通信対戦の往復書簡。
 しかし、その両者の言い分は矛盾していて……
 宇宙的広がりを感じてしまった。


・「マスター・ヤコブソン」…… ティム・クラッベ
 天才プレイヤーのペルツに、幼い頃一度だけ勝ったことがあるヤコブソン。
 母校での散々なイベントの帰り、一人の少年に通信対戦をお願いさせる。
 普段なら断るところだが、ふとその申し出を受けることに。
 適当に指していたのだが、あるとき、ペルツが指して話題になった局面になり……
 途中、じんわりと来て、ラストでチェスプレイヤーらしいエゴが(笑)


・「去年の冬、マイアミで」…… ジェイムズ・カプラン
 チェスに取り憑かれていたが、ある時を境に止めた青年。
 ある日、街でチャンピオンによる五十面指しのポスターを見かける。
 それは、以前に一度対戦したことがある相手で……
 これ、泣けるなぁ。それと同時に嘲笑したくもなるのは、凡人の証拠(笑)
 主人公が痛すぎる。