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アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

『アッチェレランド』チャールズ・ストロス早川書房 海外SFノヴェルズ〉
待ち続けていた1冊が、やっと刊行!

21世紀初頭、マンフレッド・マックスは、見知らぬ誰かに斬新なアイデアを提供し、富を授けていく恵与経済の実践者。ある日、その彼を頼ってロシアからAIが亡命の支援を要請してくる。それは、ロブスターのアップロードらしいのだが……。21世紀中葉、アンバーは木星圏に帝国を築いていた。彼女はコーク缶サイズのスターシップに人格をアップロードし、異星種族が設置したと思われるルーターを目指す……。21世紀後半、土星に都市を持つサーハンはルーターから戻ってくるアンバーを待ちかまえていた。しかし、そこにポストヒューマンである、エコノミクス2.0が大挙して彼女の魂を差し押さえようと現れるが……

サイバーパンクであり、シンギュラリティであり、経済小説であり、ダメ男小説であり、家族小説であり、その正体は超にゃんこ小説(笑)
1〜3話はSFMで既読。やっぱ面白いなぁ。ここだけでもオススメ。
素養が全くないので経済の読み方はできないんだけど、21世紀現在のサイバーパンクとしては傑作。ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)はコンピュータに触ること自体が超能力だったけど、今ではそれは誰もができる行為。そんな時代では、そこから何を得るかこそが重要。
4話からは題名通り、どんどん加速し、人類圏は広がり、さらに人類としての種も拡大されていく。物語自体がディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)のような目眩を起こすほどの巨視的であると同時に、文章はジャーゴンだらけで何とも俗っぽく、かえってスピード感を増している。
詐欺師ものでもあって、スケールや相手は人知を越えながらも、常にペテンにかけようとする展開も好み。特に第2話のオチは大好き。
今読んでおくべきSFの1冊ではないでしょうか?