JOHN SILENCE : PHYSICIAN EXTRAORDINARY

心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿 (創元推理文庫)

心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿 (創元推理文庫)

『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』アルジャナン・ブラックウッド〈創元推理文庫F527-02〉
またまた創元推理文庫のオカルト探偵もの。
ロンドンの医師で、オカルトの達人でもあるジョン・サイレンスのもとには、超常現象に悩む患者が訪れる。


「事例一 霊魂の侵略者」A Psychical Invasion
 売り出し中の喜劇作家。
 しかし、ある時を境にコメディが書けなくなるばかりか、陰鬱な内容ばかりになってしまう。
 妻は、彼がまるで家にもう一人誰かがいるかのように振る舞っているというのだが……


「事例二 古えの妖術」Ancient Sorceries
 急に途中下車した旅行者。
 中世の佇まいを残す町に宿を取ることに。
 そこで、自分がまるで住民すべてに監視されているような気配を感じるが、
 女将の娘に一目惚れして……


「事例三 炎魔」The Nemesis of Fire
 退役した軍人からの依頼。
 彼の屋敷で不思議な放火騒ぎが続いてた。
 領内にある森には、以前から不気味な噂が伝わっていて…… 


「事例四 秘密の崇拝」Secret Worship
 30年ぶりに母校を訪ねてみることにした絹商人。
 温かく迎えられるが、そこにいたのは当時と変わらぬ教師たち。
 彼はなんとか帰ろうとするが……


「事例五 犬のキャンプ」The Camp of the Dog
 無人島にキャンプに来た牧師一家。
 一匹も動物を見かけないのだが、娘が犬の遠吠えを聞いたという。
 幾日かすると、彼女のテントが爪で裂かれ……


「事例六 四次元空間の虜」A Victim of Higher Space
 独学の実験により、四次元空間への意識が開けたという男。
 しかし、彼はその世界に囚われていき……


英国恐怖文学なんて言われると、展開も文章も古臭いと思いきや、ジュール・ド・グランダン、カーナッキ、サイモン・アークと読んできて、これが一番面白く、現代のオカルトハンターものに近い。
事件は悪霊、前世、黒魔術、人狼など様々で、ジョン・サイレンスが現場に行くこともあれば、ただ依頼人の話を聞くだけだったり、秘書のハバードが語り手になるなど、こちらも多彩で、短編小説としても飽きさせない。
ジョン・サイレンスの本業が医者と言うこともあるのか、穏やかで、人格的にエキセントリックさがないのもいいのかな。