Mr Mee

[rakuten:book:13060300:detail]
『ミスター・ミー』アンドルー・クルミー〈東京創元社 海外文学セレクション〉

世間知らずの老書痴、ミスター・ミー。ある日、『百科全書』なる謎の書物の存在を知る。それを探索するため、パソコンを導入し、インターネットに夢中になる。彼が辿り着いたのは、裸の女のライブ映像。彼女が読んでいるのは『フェランとミナール――ジャン=ジャック・ルソーと失われた時の探求』。はたして『百科全書』との関係は? 
十八世紀、浄書屋のフェランとミナールは、破格の依頼料で大量の原稿を預かる。しかし、それを巡る謎の陰謀(?)に巻き込まれ、田舎に落ち延びることに。そこで出会ったのが……
ルソー専門のフランス文学教授は、教え子の生徒に一目惚れしてしまう。彼はなんとか彼女と親密になりたいと考えるが……

男ってしょうがねぇなぁ(笑)


作者のクルミーは、文学界のエッシャーと言われているそうだけど、読了後、なるほど。
悪魔のフォークやペンローズの三角のように、半分を隠せば図形として認識できるけど、全体を一度に見ようとすると、目が回り始める。
三つのストーリーからなるこの物語も、一つを隠せば辻褄は合うのに、全てを並べると、どちらが先で後か脳が混乱する。言及される人名や論文が、いつ、どこに出てきたのかページを行ったり来たり。原典と引用の境目が……


でも、その構成より、まずミスター・ミーの艶笑譚を楽しみたい。八十過ぎて夢中になるインターネット。彼の言動は微笑ましく、そして冷や冷やさせられる。
ミナールの間抜けぶり、大学教授の独りよがり、ルソーのダメ具合、男は情けない……


そして、改めて、入れ子構造になった三つの物語から成る円環を味わう。
この物語は「これを見届けるのは、我々をつくり、我々につくられた存在のみ、その存在の中心は遍在し、その外縁は果てることがない」と言う文章に集約でき、はたして、それを見ているのは……