紙の空から

紙の空から

紙の空から

『紙の空から』柴田元幸・編〈晶文社〉読了
珍しく、普通小説(っぽい)のアンソロジー

収録作品
・「ブレシアの飛行機」……ガイ・ダヴェンポート
・「道順」……ジュディ・バドニッツ
・「すすり泣く子供」……ジェーン・ガーダム
・「空飛ぶ絨毯」……スティーヴン・ミルハウザー
・「がっかりする人は多い」……V.S.プリチェット
・「恐ろしい楽園」……チャールズ・シミック
・「ヨナ」……ロジャー・パルバース
・「パラツキー・マン」……スチュアート・ダイベック
・「ツリーハウス」……バリー・ユアグロー
・「「僕の友だちビル」」……バリー・ユアグロー
・「夜走る人々」……マグナス・ミルズ
・「アメリカン・ドリームズ」……ピーター・ケアリー
・「グランド・ホテル夜の旅」……ロバート・クーヴァー
・「グランドホテル・ペニーアーケード」……ロバート・クーヴァー
・「夢博物館」……ハワード・ネメロフ
・「日の暮れた村」……カズオ・イシグロ

個人的お気に入りは、
・「道順」
 求める場所のどんな地図でも渡してくれる地図店。
 それを手にした様々な人々の物語。
・「すすり泣く子供」
 母と確執がある(と思っている)娘。
 離れて暮らしているが、パーティのためにやってくる。
 退屈で、一緒にいると息が詰まると思っているのだが、
 パーティの席で、母は生きている幽霊を見たことがあると語り出す……
・「パラツキー・マン」
 最高に美味のパラツキーを売ってくれる男。
 どうやって作っているのか、彼の後をこっそり追う兄妹。
 そこは各地から屑屋が集まっている集会だった。
 巨大な鍋で何か煮ていて……
・「「僕の友だちビル」」
 いじめられっ子の少年。
 彼は自分を応援してくれる熊の友達ビルを想像する。
 毎日慰めてもらうのだが、ビルはそんな生活に飽きて少年の元を出て行ってしまう。
・「夜走る人々」
 巨大なトラックに乗せてもらったヒッチハイカー。
 その車内は凄い騒音で、運転手と助手と三人で伝言するのも一苦労。
・「アメリカン・ドリームズ」
 小さな田舎町で、突然巨大な塀を作り始めた男。
 中に何があるのか、全くわからない。
 数年後、彼が亡くなると、塀が撤去される。
 そこには、町の模型があり、住民の人形まで揃っている。 
 しかし、一軒の屋根を外すと……
・「グランドホテル・ペニーアーケード
 生きているとも、人形ともわからない、全裸の少女が中央にいるホテル。
 宿泊客は、彼女を望遠鏡で見る……
・「夢博物館」
 道に迷ったバードウォッチャー。
 行き着いた場所は、夢の博物館。
 そこは、館主の見た夢に出てきた品物や、内容のファイルが収められていた……


旅をテーマにしたアンソロジー
旅行ではなく、旅なのでゴールはなく、その途中、またはこれから出て行く、と言う作品が多い。
特に気に入ったのは、なんとも言えず、素晴らしかった「道順」、悪意も復讐も理由も見えず、ただ疲労だけが見える「アメリカン・ドリームズ」、リスト好きとしてはファイリングに共感してしまった(笑)「夢博物館」かな。