INSPECTING THE VAULTS

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

『隠し部屋を査察して』エリック・マコーマック創元推理文庫F〉読了
カナダの小説家の短篇集。
以前単行本で出たものの文庫落ち

収録作品
•「隠し部屋を査察して」Inspecting the Vaults
•「断片」The Fragment
•「パタゴニアの悲しい物語」Sad Stories in Patagonia
•「窓辺のエックハート」Eckhardt at a Window
•「一本脚の男たち」The One-Legged Men
•「海を渡ったノックス」Knox Abroad
•「エドワードとジョージナ」Edward and Georgina
•「ジョー船長」Captain Joe
•「刈り跡」The Swath
•「祭り」Festival
•「老人に安住の地はない」 No Country for Old Men
•「庭園列車 第1部:イレネウス・フラッド」A Train of Gardens PartI : Ireneus Fludd
•「庭園列車 第2部:機械」A Train of Gardens PartII : The Machine
•「趣味」The Hobby
•「トロツキーの一枚の写真」One Picture of Trotsky
•「ルサウォートの瞑想」Lusawort’s Meditation
•「ともあれこの世の片隅で」Anyhow in a Corner
•「町の長い一日」A Long Day in the Town
•「双子」Twins
•「フーガ」The Fugue

まさに「奇妙」な話ばかりで、しかも、かなりピンポイントで趣味に合ってました。


全体的にフリークス的な話が多いんだけど、ほとんどが後天的なフリークスばかり。
ざっと見渡すと、〈切除〉〈矯正〉などの言葉が見えてくる。
しかも、なぜか陰惨さがあまりない。
その象徴的な作品が、「刈り跡」。
7月7日、幅100メートル、深さ30メートルの溝が出現する。
ありとあらゆるものが消失し、その断面は恐ろしく滑らか。
時速1600キロで西に進み、それは世界中を刈り込んでいく……
人間も消されてしまうのだが、なぜか誰も悲しまない。


また、劇中劇が素晴らしい。
「隠し部屋を査察して」の想像の罪を犯した人々。
「断片」に出てくる古文書に記された修道士たち。
パタゴニアの悲しい物語」で冒険家が語る、蜘蛛のような姿に矯正される子供。
「庭園列車 第一部:イレネウス・フラッド」の毎年麻薬を獲るために一か所ずつ肉体を切り落としていく部族のレポート。
トロツキーの一枚の写真」の病院運ばれてくる奇妙な死体。
「町の長い一日」の主人公が出会う人々。
非常にグロテスクで、かつ魅力的。


お気に入りは、「隠し部屋を査察して」「断片」「パタゴニアの悲しい物語」「一本脚の男たち」「刈り跡」「祭り」「趣味」「町の長い一日」あたりかな。
奇妙好きにはオススメ。