NIGHT WATCH

ナイトウォッチ

ナイトウォッチ

ナイト・ウォッチセルゲイ・ルキヤネンコ〈basilico〉読了
一連のファンタジーブームと映画化のお陰で翻訳されたロシアン・ファンタジー
ファンタジーと言うより、日本の伝奇ものっぽいけど。

太古より連綿と続いてきた光と闇の戦い。
しかし、このままでは共倒ればかりか、人間さえも滅んでしまうため、
二次大戦後に停戦し、お互いを監視し合うようになる。
光の異人は「ナイト・ウォッチ」、闇の異人は「デイ・ウォッチ」と。
その均衡の中、人間世界の平和は保たれてきた。
そして、現在のモスクワ。
ナイト・ウォッチのアントンは初めての実戦でヴァンパイアを追っていた。
その途中、電車の中で今まで見たことないほど強烈な呪いの渦を頭上に持った女性を見つける。
それは、世界規模の破滅を引き起こすほどの渦。
そんな呪いを放つ闇の魔術師は、登録されている中にはいない。
外から来た魔術師か? それとも、闇の陰謀なのか?
渦はますます巨大化し……

と、映画化されたのは実は第1章。
先日映画も見たばかりなので、ちょっと比較しながら感想を。


まず、原作の方が面白いです。
映画だと、デイ・ウォッチは存在感がなく、
闇も一方的に悪者っぽく描かれていて、イマイチ均衡がわかりにくい。
それに対して、原作だと、デイ・ウォッチも、光が無意味に善行を人間に与えるのを監視していて、
取り締まりも常に取り引きしながら行われている。


映画だとわかりにくい人間の存在。
人間が光か闇か選んだときに初めて、片方が消えるようになっている。
そのため、両陣営の上層部は全てのメンバーをコマと見なして、
陰謀を巡らせ、一方でお互い同意し、有利な流れを作るためのゲームを続けている感じ。
ボリスとザヴロンは、原作だと光と闇のトップなのかわからない(上層部と言うものが存在する)


また、光の陣営は違法な吸血行為を取り締まるくせに、
バランスのため、年に何人かは、勝手にヴァンパイアの餌として認可したり、
光に有利なように人間の歴史そのものに手を加えたりしようとする。
一方で闇は、ドラスティックに人間界に干渉せず(ウソかもしれないけど)、
自分や家族のために存在していて何が悪い、と言う態度。
どちらが正しいと言うことは答が出ず、アントンは悩むことになる。
この辺の、歴史の闇に潜んでいるだけでなく、
実はロシアの歴史そのものを作ってきたのも彼ら、と言う設定はかなり好み。


ちなみに、イゴールはアントンの息子でもなんでもないし、
両者を越えた新たな種族でもありません。
実は、光と闇の上位に立つ存在もいて、世界の構造はまだはっきりとはわからない。


映画とは別物だけど、いろいろ疑問に思った方にはオススメ。
続きも訳されないかなぁ。