ロシア・ファンタスチカ(SF)の旅

ロシア・ファンタスチカ(SF)の旅 (ユーラシア・ブックレット)

ロシア・ファンタスチカ(SF)の旅 (ユーラシア・ブックレット)

『ロシア・ファンタスチカ(SF)の旅』宮風耕治東洋書店)読了
今回初めて知ったんだけど、ロシア文化などの概説をしたブックレットシリーズ。
ロシアSFなんて全く知らないんで、いろいろとためになりました。


ロシアの小説というと硬いイメージ(ベタな先入観……)しかなかったんだけど、
SFはかなり大きなジャンルだそうだ。
ロシアではSFのことをナウーチナヤ・ファンタスチカと言うんだけど、
最近では、単にファンタスチカと呼ぶことが一般的だそうだ。
広義のSFもここの言葉に含められるのかな?


ロシアSFは1920年代に第一の波が来るものの、スターリン時代に低迷してしまう。
5カ年計画がSF低迷に影響しているのが興味深かった。
戦後、スターリン批判、スプートニクの打ち上げなどで、SFの波が来るが、
文化統制は再びきつくなり、自由には書けなくなってしまう。
そこで台頭するのがストルガツキー兄弟
70年代に入っても、文化官僚に統制は続き、出版できない。
その間、ストルガツキー兄弟によるセミナーが開かれ、次の時代の作家たちが育ち始める。
90年代、ソ連が崩壊し、統制もなくなったと同時に、出版システムもなくなってしまい、
出版が極めて困難な状況になってしまう。
しかし、ファンたちが出版社を作り――
という歴史概説がかなり楽しめた。


他にはストルガツキーや現代の作家で章を使っている。
翻訳された本のリストはリスターとしては嬉しいんだけど、
本になってない短篇のリストも欲しいところだなぁ。
昔のS-Fマガジンなんか、結構掲載されてるし。


ロシアSFに詳しい人から見たら薄いかもしれないけど、
全然知らない人には概説本としていいんじゃないでしょうか。