BUMBERBOOM and other stories

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン河出書房新社 奇想コレクション〉読了

奇想コレクションの最新刊。
なんか読むのに時間がかかってしまった。

 収録作品
・『ゴーレム』The Golem
・『物は証言できない』The Necessity
・『さあ、みんなで眠ろう』Now Let Us Sleep
・『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに』Or All the Seas with Oysters
・『ラホール駐屯地での出来事』The Affair at Lahore Cantonment
・『クィーン・エステル、おうちはどこさ』Where Do You Live, Queen Esther?
・『尾をつながれた王族』The Tail-Tied Kings
・『サシュヴラル』Sacheverelle
・『眺めのいい静かな部屋』A Quiet Room with a View
・『グーバーども』The Goobers
・『パシャルーニー大尉』Captain Pasharooney
・『そして赤い薔薇一輪を忘れずに』And Don't Forget the One Red Rose
・『ナポリ』Naples
・『すべての根っこに宿る力』The Power of Every Root
・『ナイルの水源』The Source of the Nile
・『どんがらがん』Bumberboom

お気に入りは、


・『物は証言できない』
 阿漕な商売で町中の嫌われ者の奴隷商人。
 彼は病気の黒人を健康と偽って売ったと告発されるが、
 証人も奴隷で、奴隷はものと同じだから証言できないと主張。
 その奴隷を買った雇い主がやってきて、身の危険を感じた奴隷商人は彼を殺してしまうが……
 無駄のない、最高のパズルのような短篇。素晴らしい。
・『尾をつながれた王族』
 それぞれ尾で繋がれ、自由を奪われた王族。
 そこに、水や食糧を運んでくる一つ目の種族の少年。
 少年は、王族から秘密を教えると持ちかけられるが……
 どういう世界なのか全く判らないんだけど、非常にグロテスクなものを感じる作品。
・『そして赤い薔薇一輪を忘れずに』
 雇い主にいつもいじめられながら、ストーブの修理をしている男。
 ある日、同じアパートに住むアジア人と知り合う。
 彼は本を売っているという。
 その部屋にあるのは、見事な本ばかり。
 そして、値段は……?
 古本ファンタジーとして、これはかなりしびれる。
・『サシュヴラル』
 知能を持ち、喋る猿のサシュヴラル。
 金儲けのために、男がサシュヴラルを誘拐する。
 サシュヴラルが猿なのかどうかはよくわからない。
 なぜか、非常に生理的嫌悪感を感じ作品。
・『ナポリ
 ナポリの寂れた路地を行く男。
 彼は何かを買おうとしているらしいのだが……
 これも、なんだかよくわからないんだけど、
 路地裏の空気が最高に素晴らしい。
・『どんがらがん』
 いつか、どこかの世界。
 国を復興させるための呪術を探しているマリアン王子。
 彼は旅の途中、どんがらがんと呼ばれる謎の兵器を扱う一団に遭遇する。
 彼らは巨大などんがらがんを押して各地を回り、
 怯えた人々から食糧を奪っていく。
 マリアンは計略を巡らし、どんがらがんを配下に収め、
 その力を利用とするが……
 強烈な題名の作品。実はあんまり好きじゃないんだけど、
 一団が「どんがらがーん」「どんがらがーん」と押してる様が楽しそうなので(笑)


デイヴィッドスンの作品は、どれも、何か違和感というか、受け入れがたいものを感じる。
でも、その受け入れがたい核を取り除いちゃうと、作品の魅力が失われる。
そんな短篇ばかり。
名作の誉れ高い『ゴーレム』は、凄さも面白さも、よくわからなかった。


ちなみに、『輝く断片』に続いて、今回の表紙もかなり好き。