TOOTH AND CLAW

アゴールニンズ

アゴールニンズ

アゴールニンズ』ジョー・ウォルトン早川書房〉読了


2004年度世界幻想文学大賞受賞作。
ちょっと前に紹介文を読んで、凄い読みたかったんだけど、
こんなに早く訳されるとは。


ヴィクトリア朝風世界のファンタジー
身分違いの恋。
爵位の壁。
新教と旧教。
不公平で横暴な遺産相続。
不必要に虐げられる使用人たち。
弱い子供を奪われる農夫。
と、お約束ガジェットが揃ってるけど……


ボン・アゴールニン啖爵が亡くなった。
牧師になった長男ペンと、長女の娘婿のデヴラク士爵は成功を収めているのだから、遺産は黄金一つずつ。
残りは全て、次男エイヴァン、次女セレンドラ、三女ヘイナーに与えろと遺言したにもかかわらず、
デヴラク士爵は一人で啖爵の体を半分も食べてしまう。
ドラゴンは、ドラゴンの肉を食べることによって体が大きくなり、力を増す。
彼らの世界では、体の大きさ=社会的な力でもあり、
同族の肉を食べることは滅多にない、絶好のチャンスなのだ。
しかし、食べてしまったものは、どうにもならない。
ペンは臨終の間際に父からの告白に苦悩する。
都会で都市計画美観局に勤めるエイヴァンはデヴラクを訴えることにする。
エイヴァンの恋人兼秘書のセベスには、彼にも言えない秘密が。
デヴラクに引き取られたヘイナーは、そこで召使いたちの自由を考える
そして、ペンに引き取られたセレンドラは、そこで出会ったシャー珀爵と恋に落ちるが、様々な壁が……
彼らは幸せになれるのか?


かなり好みのファンタジー
剣と魔法よりも、こういう捻ってある方が好きだなぁ。
ドラゴンたちの生活と生態が面白く、それがヴィクトリア朝的常識とうまく絡んでいる。
話の軸になっているのが同族を食べること。それによって強くなる。
子供が産まれると、長生きできない弱い子供は食べられてしまう。
また、農夫の弱い子供などは、そこの領主に差し出す。
そのため、貴族はますます大きくなり、農夫は小さいまま。
もう一つの軸が、プロポーズ。
女性は意中の男性に触れられると鱗が赤系の色になる。
したがって、その色になっても結婚していない娘は娼婦やふしだらなと、良い縁組みが出来ない。
セレンドラの身に起きる事件は、後々まで尾を引くことに。
他にも、帽子がおしゃれとか、ドラゴンに付き物の炎、翼、黄金の話も色々と。
実は、この世界には人間もいて、国境で戦争状態。


ヴィクトリア朝風と言うことで、
主人公セレンドラとシャーは、エマとウィリアムに自動脳内変換(啖爵令嬢と珀爵だけど)


オススメ。