THE SPEED OF DARK
- 作者: エリザベスムーン,Elizabeth Moon,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/10
- メディア: 単行本
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少し未来の物語。
3歳くらいまでならば、自閉症が完治できる時代。
主人公のルウは、それが間に合わなかった、最後の自閉症世代。
しかし、数学とパターン解析の才能に優れているため
製薬会社にちゃんとした仕事を持ち、
一人暮らしをし、フェンシングクラブに入っていて、そこに好きな女性もいる。
そんなある日、新しくやってきた上司が、成人にも効く新薬が開発されたから、
それを受けなければクビだと言ってきた。
ルウを始め、自閉症セクションの同僚たちは悩み始める。
彼らの出した結論は……
あらすじから最初に受ける印象は、『アルジャーノンに花束を』。
実際、そう言うイメージを持ってたんだけど、
『アルジャーノン』がかなり最初の方から新薬を投与されて、
知能が向上していく様を描かれているのに対して、
こちらは、全体の90%くらいが、主人公ルウの生活と考えに占められている。
だから、非常に自閉症患者の考え方や行動が理解できる。
小難しい専門書を読むより、自閉症の概観を知ることができるかもしれない。
後天的な精神病だと思っている人も多いかもしれないけど、
それは間違いだと言うことがよくわかると思う。
さて、感想。
この作品の感想はラストに集約されると思う。
あのラストはどうなんだろう?
無責任な読者としての感想は、望んでないラストだなぁ。
でも……う〜ん。
あんまり書くと、ぽろっとネタバレしちゃいそうなので、興味がある人は各々読んで欲しい。
また、ルウを囲む人々はみんないい人なんだけど、
やはり敵役はいるわけで、彼の言葉は、
本書の中の言葉を使えば"ノーマル"の人々の代弁なんだと思う。
一読者としては、主人公に味方するから、すごい嫌な奴なんだけど、
普段の生活では多かれ少なかれ、そう言う風に見ているのではないだろうか?
それに気づかされただけ、非常に幸せな本と出会ったと言えるかもしれない。
オススメ。
ちなみに、自閉症の描写が詳しいと思ったら、
作者の息子さんが自閉症だそうだ。