今月の『SFマガジン』は『犬は勘定に入れません』発売に合わせて、コニー・ウィリス特集。
それにしても、近所で売ってない。まだ出てないの?


・『最後のウィネベーゴ』……コニー・ウィリス
犬は絶滅し、厳しい道路規制が敷かれており、
動物保護団体が強大な権力を持っているらしい近未来。
主人公のデイヴィッドはアメリカ最後のキャンピングカー、ウィネベーゴの取材に行く。
その途中、道路でジャッカルが死んでいるのを見て、やはり死んだ愛犬のことを思い出す。
その犬はアメリカでほとんど絶滅しかけていた時期に、車に撥ねられたのだ。
ウィネベーゴで暮らしている老夫婦の取材を終えて帰宅すると、
動物保護団体の二人組が訪れてくる。
ジャッカルのことを通報はしたが、名乗らなかったのに、どうして自分のことが?
しかも、自分のことを疑っているらしい。
さらに愛犬が死んだときに一緒だった少女に思いは飛び……
あらすじ書くのが難しいな。
ほとんど説明されない未来の情報。
前触れなく普通の文章に紛れ込んでいる過去の記憶。
つながりのないエピソード。
しかし、それがラストで……
犬、キャンピングカー、カメラマン、滅びゆくものたちへの愛情あふれる作品。
キャンピングカー夫婦の思い、主人公の決断、
運命には逆らえないけど、少しでも滅ぶのを伸ばそうとする人々。
ペット飼ってないんで、残念ながら、解説にあるような愛犬に対する感動は感じなかったけど、よかった。
来年の読者賞に選ばれるはず。
・『白亜紀後期にて』……コニー・ウィリス
年々縮小されつつある古生物学部。
そこに、効率化・リストラクチャーの専門家がやってきて……
これは非SF作品。
古生物と古生物学部、ともに滅びゆく存在として描かれているパロディもの(?)
ラストはやはり、進化ってこと?
・『死の真実を語る作家』(インタビュウ)
なかなか読み応えあり。
911以降の意識など、必読。
現代のアメリカの様子を斜めに、しかし、的確に見通してる。


・『生家の裏庭』……ジェイムズ・P・ブレイロック
こちらも『魔法の眼鏡』発売に合わせての掲載。
主人公が、子供時代を過ごした家を見に行く。
すでにそこは空き家になっていた。
ふと地面を掘ると、そこには子供の時に埋めた宝物が。
その宝物をいじっている内に、彼は30年前の世界に行ってしまう。
現代に戻るには、また宝物が必要と思うが、まだ埋められていない。
どうやら過去の自分と家族は出かけているようで、その内に探そうとするが……
アメリカのファンタジーって、
若かった頃の父親と出会う話が、なんかサブジャンルを形成できるくらいあるような。
ぱっと思いつくのは映画しかないけど、『フィールド・オブ・ドリームス』とか『オーロラの彼方に』とか。
大人になって、自分が知らなかった本当の(理想の)家族の姿を見る、
てのはアメリカ人にとっては夢なのかなぁ。
強く豊かな時代への郷愁?
日本でのこの手の傑作は、やはり谷口ジローの『遥かな町へ』かな。


今月の『猿たちの迷い道』は非常に面白かった。
この話題のつなげ方上手いなぁ。学びたい。
内容は腹話術の話。
腹話術が、SF史に残るある事件に大きくかかわっていた!
それは……


『近代日本奇想小説史』は〈ドクター・ニコラ〉シリーズが明治に翻訳されていたお話。
なんだけど、よっぽど黙っていられなかったことがあるらしく、
それについて一言言ってます。


『MAGAGINE REVIEW』は〈アシモフ〉誌。
ウォルター・ジョン・ウィリアムズの" Green Leopard Plague" てのがかなり面白そう。
訳してくれないかな。


アメリカでは〈パーンの竜騎士〉18部、〈オナー・ハリントン〉10部が出たそうな。