今月のSFマガジンは宇宙SF特集。


翻訳作品は
・『有機礁』……ポール・J・マコーリイ
・『ドラド・ワームホールで』……ジェフリー・A・ランディス
・『火星の長城』……アレステア・レナルズ


『有機礁』
人間が宇宙に暮らす未来。
過去、エンキと名づけらたカイパーベルト小惑星で、大がかりな実験が行われた。
それは今まで行方不明になっていたのだが、ようやく見つかり、一攫千金を狙って調査を開始した。
そこにある巨大な断層には、独自に進化した真空有機物が存在していた。
その多様性は奇跡といってもよく、調査していない底にはまだまだ存在していると思われた。
しかし、支配者たちはすでに商品となる有機物のサンプルは採取したため、他の人間に取られないように全てを破壊するよう決定した。
科学者として、他に類を見ない進化を消すことは許されないと主張したマーガレットは
最下層プラントに降格されてしまうが、それでも単身彼女は谷底に向かった。
そこで見たものは?


『ドラド・ワームホールで』
ワームホールを通って数千光年先まで航海する未来。
ワームホールのそばにはポートがあり、チーナそこで働くウェイトレス。
彼女には恋人がいるのだが、彼は各港に女がいるという噂で、それが元で喧嘩したばかり。
しかし、彼が乗った船が難破し、その破片が流れ着いてきた。
ワームホールは時間も貫いており、6日後からのものらしい。
そして、彼の遺体も発見される。
だが、いつまでも悲しんでいられない。
船が到着すれば店は船乗りでいっぱいになり、忙しくなる。
そこに……


『火星の長城』
連合と連接脳派は一触即発の状態にあった。
連接脳派は脳内のコンピューターにより、全ての人間が精神や感覚を共有しているのだ。
彼らは火星に封じ込まれており、挑発するかのように脱出ロケットを打ち出しては、
ことごとく打ち落とされていた。
軍司令官ウォレンの弟ネビルは以前、連接脳派に1年ほど捕らえられていたことがあり、
戦争を避けるための交渉役として火星に向かった。
しかし、その人数は予想を遥かに下回り、戦争が起きればひとたまりもない。
それなのに、なぜ挑発するような行為を続けるのか?
だが、兄はネビルが殺されたと情報を流し、攻撃を始めた!


『ドラド・ワームホールで』と『火星の長城』が面白かった。
『有機礁』は個人的にはイマイチ。


『ドラド・ワームホールで』の話のキモになっているのが、
ワームホールは過去も未来も貫いているという点で、
そのため、港にいる人間は時間を外れた船の結果を知る立場にいる。
でも、タイムパラドックス防止のシステムがひじょうに人間頼みで、あれでやってけるのかな?
船乗りと港で待つ恋人って言うと、ヴィンジの『鉛の兵隊』が好き。


『火星の長城』は現代の作品なんだなぁ、と感じた。
昔からある宇宙戦争物なんだけど、
イデオロギーやらシステムやらが、画一的じゃなくて、それでおしまい、じゃないんだよね。
ちょっと『スクリーマーズ』を思い出した。