A CASE OF CURIOSITIES

驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 (海外文学セレクション)

驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 (海外文学セレクション)

『驚異の発明家の形見函』アレン・カーズワイル(東京創元社)読了。


「私」が骨董オークションで手に入れた函は、形見函と言われるものだった。
他人にはただのがらくたにしか見えないが、
それを作った本人にとっては、人生の転機や想い出となった品々なのだ。
この函を作ったのはクロード・パージュ。
フランス革命前夜に自動人形を作った男の物語。


なかなかよかった。
装丁もかなり気を使っている感じだし。古い本の手触りと臭いが感じられる作品。


もっとビックリドッキリメカが出てくるのかと思っていたら、
基本的には発明家のクロードの人生がずっと描かれている。
この作品が評価されているのは、別に奇天烈なものを書いてではなく、
18世紀のフランスが生き生きと描かれている点だろう。


個人的に、フィクションの完成度は、食事のシーンのでき如何だと思っている。
その点、この作品は、クロードの師匠の館での食事や、パリの安くて上手い定食屋、意地悪な本屋のいかにも不味そうな健康食。
その全てがリアルに描かれているのが嬉しい。あぶり肉が焼けているシーンと来たら! これだけで合格(笑)


そして、クロード以上にその師匠が非常に魅力的。
ラスト近くで、その師匠は人に教える技術は最高だ、と言われるけど、説得力がある。


大きくて重い本だけど、オススメ。