黒い本

 新潮社から『アメコミ&ムービー・スーパーガイド』が発刊されました。


 インタビューとか、それなりに読めるし、
 アメコミについて(マーヴルのみだけど)ざっと知りたい人は、読んで損ないかも。
 でも、なんと言っても、目玉は『the Amazing Spider-Man #36』の翻訳が載ってることでしょう。


 ……でもね、あの袋とじはないんじゃないの、新潮社さん。
 アメコミだから閉じは逆で、切るべきところが本書のノドにあるってのは、
 どうしたって、本が痛むと思うんだけど。
 これなら、素直に袋詰にしてくくればいいものを。
 手先が器用な弟に技を駆使してもらい、とりあえず切り離す。


 どんな話かと言うと、
 911グランド・ゼロに立ったスパイダーマン他、マーヴルキャラクターの話。
 これを読むと、あのショックがアメリカ人にとってどんなものだったか、多少なりとも分かる。
 アメコミのスーパーヒーローの存在を真っ向から否定するなんて話は、史上初めてでしょう。
 キャプテン・アメリカもナチや大日本帝国と戦っているけど、あれは飽くまで遠くのお話だったんでしょうね。
 それが、マンハッタン(マーヴル社の目と鼻の先)で起きたとき、
 我らが隣人も「何ができるのか? 何もできないじゃないか!」と言う現実を叩きつけられてしまったわけです。
 一晩で書き上げたらしいですが、その衝撃を物語っている気がします。


 一方、キングピンやマグニートーもそこに立ち尽くし、絶望します。
 ドクター・ドゥームが泣いてるのとか見ると、
 こう言うものを書いてしまうアメリカ人の気持ち悪さみたいなものも感じてしまいます。
 マーヴルの悪役たちだって散々色々やってきているくせに。
 この悪役たちが今までのアメリカ、と言うことなんでしょうか?
 でも、イラク戦争とか見ちゃうと、なんだかね。


 アメコミに興味がない人でも、
 この作品は必見だと思います。
 いろいろ考えさせられます。