LANDSCAPE OF LIES

まやかしの風景画 (ミステリアス・プレス文庫)

まやかしの風景画 (ミステリアス・プレス文庫)

『まやかしの風景画』ピーター・ワトソン(早川書房)読了。


いや、こういう小説が読みたかったんだよ。
……ってのは、言い過ぎかもしれんけど、かなり俺好み。


あらすじは、主人公の女性が、家に代々伝わる奇妙な風景画に、
値打ちはないけど、何かあると思い、画廊に持ち込むところから話は始まる。
どうやら、その絵には、宝物の隠し場所が表されているらしく、
二人はそれを探っていくが……てな感じ。


まー、ライバルの狂える博士みたいのも出てくるし、よくあるタイプの話なんだけど、
その謎解きというのが、暗号や地図ではなく、
その絵画にちりばめられたアレゴリーなのだ!
!マークつけるほどじゃないって?


いやいや、『ギャラリーフェイク』の『寓意のある風景』に酔ったあなたなら、失禁もの間違いなし。
二人は無論、中世の知識人のパズルであった寓意の意味などなかなか分からないから、
うちにあるような『動物シンボル辞典』やら『世界シンボル辞典』なんぞで調べていくわけだ。
それがまた楽しい。
そうして、一つずつ絵解きをして、宝物に近づいていく。


この本のいい所は、巻頭にその絵が折りこみページで載っているところ。
この絵を見ながら、「ああ、なるほど」と電車で何度うなづいたことか。
こういう小説って他にないかな?
地図とかついてると嬉しくなっちゃうね。


そんなわけで、ハヤカワ・ミステリプレス文庫でも出てるけど、
なるべくなら絵が大きくて見やすいハードカバーがオススメ。
もうちょい深みがあればな、と思わないでもないけど、楽しい小説には間違いない。