A GOOD OLD-FASHIONED FUTURE

タクラマカン (ハヤカワ文庫SF)

タクラマカン (ハヤカワ文庫SF)



何年か前に『スキズマトリックス』を読んだときは面白さが分からず、ちょっと前に『ディファレンス・エンジン』を読んだときは疲れただけだった。
しかし! 今回の『タクラマカン』をかなり面白かった。


今まで読んできたのが長篇だったから、比べるのもなんだけど、とにかくけっこう気に入った。
全体的な感想は、サブカルチャーと言うか、カウンターカルチャーと言うか、スカムカルチャーと言うか、
とにかくそう言うものを使うのがスターリングは上手い。わざとらしくなく自然。


『小さな、小さなジャッカル』はその辺が盛り込まれていて、
ロシアに武器を買い付けに来た尊師が出て来たり、
フィンランドのおばあさんが書いた青い生き物の童話が日本で大人気とか、SFではなくほとんど現実。
ハーモニカを吹いている生き物の名前はフィンランド語じゃない、って台詞が出てくるから、やっぱ青い生き物ってあれだよなぁ(笑)。


『聖なる牛』はマサラムービーネタ。さすがスターリング、目をつけるのが早い。


ラッカーとの共著の『クラゲが飛んだ日』はちょいラッカー味が強いかな。


『招き猫』は近未来日本が舞台。
変なところはなく、すこぶる自然。ただ、なると入りラーメンって記述は普通はしないよな。
よっぽと、なるとが衝撃的だったのかな。そーいや、ギブスンの『あいどる』にもブラックブラックガムが出て来たっけ。


で、最後のチャタヌーガ三部作がやはり一番面白かった。
サイバーパンクの必需品、脳内チップとジャックインの代わりに、
ここでは超コンピューターミラーシェイドと言うべきスペックスと言う眼鏡をかけて、ネットワークと接続する。
特に1話目の『ディープ・エディ』がお気に入り。
ちょっと『記憶屋ジョニイ』とかぶる気がするけど。
ここに出てくる女ボディガードのザルデルがかっこいい。モリイには及ばないけどね。
2話目『自転車修理人』に出てくるバーチャルツール・ド・フランスのアルド・チポリーニって、やっぱマリオ・チポリーニがモデルなんだろうな。
3話目『タクラマカン』は一番SFっぽい話なんだけど、それほど気に入らなかった。
サイバーパンクはごちゃごちゃした街で、適当なことしてるのが好きなんだよね。


ちなみに、序文がかなり面白い。本書で一番面白いかも(笑)