United States of Japan

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』ピーター・トライアス〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉

第二次世界大戦で日本とドイツが勝利し、アメリカ西海岸が日本の統治下におかれて、40年。巨大ロボット兵器「メカ」が闊歩するこの「日本合衆国」で、検閲局に勤める帝国陸軍の石村大尉は、特別高等警察の槻野(つきの)課員の訪問を受ける。槻野は石村のかつての上官、六浦賀将軍の消息を追っているという。高名な軍事ゲーム開発者の六浦賀(むつらが)は、先の大戦アメリカが勝利をおさめた改変歴史世界を舞台とするゲーム「USA」をひそかに開発し、アメリカ人抵抗組織に協力しているらしい。石村は槻野とともに六浦賀将軍を捜索することになるが――21世紀版『高い城の男』の呼び声が高い話題沸騰の改変歴史SF。

なんという表紙詐欺!w


日本が支配する改変されたアメリカに巨大ロボが跋扈する、というキャッチーなインプレッションで評判になった作品が早くも翻訳。
ハヤカワもやる気満々で、珍しく、銀背と青背の2バージョンを同時発売。


パシフィック・リム*1的な巨大ロボバトル小説が読みたくて手に取ったのなら、激しく落胆すると思うけど、ディストピア小説としては、なかなかの陰鬱さ。


日本軍によって、米国内の日系人収容所から解放され、これで戦争が終わった、と思いきや、カメラがパンすると、不敬罪によって簡単に射殺されてしまう時代が幕を開ける……『United States of Japan』! とタイトルが出る感じ。


特高憲兵による警察国家で、拉致監禁拷問は当たり前なんだけど、巨大ロボット兵器「メカ」や改造人間、「電卓」と呼ばれる携帯端末といったアニメっぽいガジェットに加え、検閲局に務めながら軍から一歩引いた、飄々とした石村が、全体のトーンを重苦しさ一辺倒になることを防いでいる。


なんとなく『ライジング・サン』*2を想起させる日本像で、食べものも珍妙なんだけど、それが結構美味しそう。特に天ぷらバーガーは食べたいw


アメリカが勝つ」という改変歴史ゲーム「USA」を追うのがメインストーリー。
「USA」シンパは、本当にアメリカが勝っていれば、誰もが自由を謳歌できる世界ができていたはず、と宣うんだけど、こちらの世界でそれは実現できていない皮肉。


表紙詐欺と書いたけど、ロボットバトルのシークエンスは短いながらもあって、それが結構面白い。ジャンル者なら、容易にエヴァやイェーガーで補完できるはず。予定されてる続編では、ドイツのロボットと戦うシーンが大幅増とか。『機神兵団』*3じゃん!


ただ、この「メカ」の存在の説明がないのがイマイチ……
もうひとつの1980年代に巨大ロボがいるのは別に気にならないんだけど、歴史が分岐する前の戦中にロボがいることに、何らかの説明は欲しかったなぁ。学天即が進化した世界線とかでいいから。