United States of Japan
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 作者: ピータートライアス,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (20件) を見る
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ピータートライアス
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/31
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (10件) を見る
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ピータートライアス,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (6件) を見る
第二次世界大戦で日本とドイツが勝利し、アメリカ西海岸が日本の統治下におかれて、40年。巨大ロボット兵器「メカ」が闊歩するこの「日本合衆国」で、検閲局に勤める帝国陸軍の石村大尉は、特別高等警察の槻野(つきの)課員の訪問を受ける。槻野は石村のかつての上官、六浦賀将軍の消息を追っているという。高名な軍事ゲーム開発者の六浦賀(むつらが)は、先の大戦でアメリカが勝利をおさめた改変歴史世界を舞台とするゲーム「USA」をひそかに開発し、アメリカ人抵抗組織に協力しているらしい。石村は槻野とともに六浦賀将軍を捜索することになるが――21世紀版『高い城の男』の呼び声が高い話題沸騰の改変歴史SF。
なんという表紙詐欺!w
日本が支配する改変されたアメリカに巨大ロボが跋扈する、というキャッチーなインプレッションで評判になった作品が早くも翻訳。
ハヤカワもやる気満々で、珍しく、銀背と青背の2バージョンを同時発売。
『パシフィック・リム』*1的な巨大ロボバトル小説が読みたくて手に取ったのなら、激しく落胆すると思うけど、ディストピア小説としては、なかなかの陰鬱さ。
日本軍によって、米国内の日系人収容所から解放され、これで戦争が終わった、と思いきや、カメラがパンすると、不敬罪によって簡単に射殺されてしまう時代が幕を開ける……『United States of Japan』! とタイトルが出る感じ。
特高と憲兵による警察国家で、拉致監禁拷問は当たり前なんだけど、巨大ロボット兵器「メカ」や改造人間、「電卓」と呼ばれる携帯端末といったアニメっぽいガジェットに加え、検閲局に務めながら軍から一歩引いた、飄々とした石村が、全体のトーンを重苦しさ一辺倒になることを防いでいる。
なんとなく『ライジング・サン』*2を想起させる日本像で、食べものも珍妙なんだけど、それが結構美味しそう。特に天ぷらバーガーは食べたいw
「アメリカが勝つ」という改変歴史ゲーム「USA」を追うのがメインストーリー。
「USA」シンパは、本当にアメリカが勝っていれば、誰もが自由を謳歌できる世界ができていたはず、と宣うんだけど、こちらの世界でそれは実現できていない皮肉。
表紙詐欺と書いたけど、ロボットバトルのシークエンスは短いながらもあって、それが結構面白い。ジャンル者なら、容易にエヴァやイェーガーで補完できるはず。予定されてる続編では、ドイツのロボットと戦うシーンが大幅増とか。『機神兵団』*3じゃん!
ただ、この「メカ」の存在の説明がないのがイマイチ……
もうひとつの1980年代に巨大ロボがいるのは別に気にならないんだけど、歴史が分岐する前の戦中にロボがいることに、何らかの説明は欲しかったなぁ。学天即が進化した世界線とかでいいから。