ANNIHILATION

全滅領域 (サザーン・リーチ1)

全滅領域 (サザーン・リーチ1)

『全滅領域』ジェフ・ヴァンダミア〈ハヤカワNV1320〉

突如として世界に出現した謎の領域〈エリアX〉。そこでは生態系が異様な変化を遂げ、拡大を続けていた。監視機構〈サザーン・リーチ〉に派遣された、生物学者をはじめ女性4名からなる調査隊は領域奥深く侵入し、地図にない構造物を発見、そしてそこに棲む未知の存在を感知する。さらに進むべきか、引き返すべきか? 無事に帰還できた隊は過去に存在しない……。大型エンタテインメント〈サザーン・リーチ〉三部作開幕

極論すれば、小説は、謎(疑問)が解明されるものと、解明されないものの二種しかないと思う。


三部作ということは知っていたけど、たとえそれを知らなくても、謎は謎のまま終わりそうだなぁ、という予感はしていたと思う。
というわけで、〈エリアX〉の正体は何も分からないで終わります。って、ネタバレじゃないよね?


この小説は、謎が解明されるよりも、新たな謎が現れるのを期待する類の話だと思う。
未知の〈ゾーン〉に踏み入っていくと聞くと、『ストーカー』*1を想起するわけだけど、個人的には馴染み深い『LOST』*2のイメージ。姿を表さない怪生物、意味ありげな建築物、オカルティックな現象、と次々に提示される謎こそが、物語の牽引力になっている。


ただ、そうなってくると気になるのが、ちゃんと風呂敷たたまれるの? ということ。
しかし、一人称の文体から、これは信用出来ない語り手であり、そうでなくても〈エリアX〉が認識と知覚をおかしくすることは語られているから、最初にも書いたように、謎が解明されない、ということは想像に難くない。
読者は安心して、「謎」の奔流にひたれるわけだw


解説で、ジェフ・ヴァンダミアは本邦初紹介とあるけど、短篇がいくつか訳されている。