変愛小説集 日本作家編

『変愛小説集 日本作家編』岸本佐知子・編〈講談社

「変愛は純愛。そういう目であらためて見まわしてみると、海外の作品のみならず、日本の作品にも、すばらしい変愛小説がたくさんあることに気がつき」、「ここ日本こそが世界のヘンアイの首都であると思え」たという岸本氏が選んだ、現代の12人の恋愛小説の名手による、変てこだったりグロテスクだったり極端だったりする、究極に純度の高い愛のアンソロジー


「形見」……川上弘美
「韋駄天どこまでも」……多和田葉子
「藁の夫」……本谷有希子
「トリプル」……村田沙耶香
「ほくろ毛」……吉田知子
「逆毛のトメ」……深堀 骨
「天使たちの野合」……木下古栗
「カウンターイルミネーション」……安藤桃子
「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」……吉田篤弘
「男鹿」……小池昌代
「クエルボ」……星野智幸
「ニューヨーク、ニューヨーク」……津島佑子

お察しのとおり、基本、翻訳小説しか読まないんだけど、『変愛小説集』第三弾とあらば、手に取らないわけには行きますまい。


う〜ん。
イマイチ印象薄いなぁ。今、面白かった作品おあらすじ教えて、と言われても思い出せないくらい。


その分、翻訳物ではなかなか味わえない日本語としての遊びは堪能できる。その中で際立っているのが「逆毛のトメ」。
物凄く好き嫌いが分かれそうな作品だと思うけど、この文体は中毒性高いなぁ。


「韋駄天どこまでも」の、漢字ファックも衝撃的。むしろ、これだけで話作って欲しかったなぁ。


物語として一番気にいったのは「トリプル」かなぁ。
三人一組の恋愛形式トリプルという新世代が現れた世界。
カップルしかいなかった旧世代からは変態、汚らしい物を見るかのような差別を受けているが、彼らには二人組のほうが理解できない。
三人一組って3P? という先入観が絶対あるけど、彼らのセックスは旧人類とはまるで形式が違う。
モラル、タブーの変容はSFと言って差し支えない。
変愛であり、まごうかたなき純愛。