バン、バン! はい死んだ ミュリエル・スパーク傑作短篇集

バン、バン! はい死んだ: ミュリエル・スパーク傑作短篇集

バン、バン! はい死んだ: ミュリエル・スパーク傑作短篇集

突き抜けた意地の悪さが痛快な、イギリスのブラックユーモアの女王、秘蔵の傑作群。久しぶりに会った幼なじみが、私を目にして顔面蒼白になって取り乱したのは……「ポートペロー・ロード」。外見は瓜二つだが性格は正反対の少女たちの、友情の裏に潜む敵情心がじわりと突き刺す表題作。小さな空飛ぶ円盤が家に飛び込んできたことから始まる、カップルの意地の張り合いが可笑しい「ミス・ピンカートンの啓示」。ミステリあり、スラップスティックあり、ロマンティックな恋愛ありの、多彩な味わいで贈る日本オリジナル短篇集。本邦初訳多数。


収録作品
・「ポートペロー・ロード」
・「遺言執行者」
・「捨ててきた娘」
・「警察なんか嫌い」
・「首吊り判事」
・「双子」
・「ハーパーとウィルトン」
・「鐘の音」
・「バン、バン! はい死んだ」
・「占い師」
・「人生の秘密を知った青年」
・「上がったり、下がったり」
・「ミス・ピンカートンの啓示」
・「黒い眼鏡」
・「クリスマス遁走曲」

以前からミュリエル・スパークは変な話が多いと聞いていたけど、絶版が多く、最近になってやっと『運転席』*1と『邪魔をしないで』*2を読むことができた。
噂に違わぬ変な読了感で、これまた絶版になってる短篇集*3でも手に入れようかと思っていた矢先に、日本オリジナル選集ですよ!


スパークの作品は女性が主人公のものが多い。
彼女たちは若く、何気ない選択ミスのせいで、嫌な(悲惨な)目に遭う。作者はそんな彼女たちを「だから言ったじゃない」と冷たい目で眺めている。そして主人公が女性でない場合、その相手はたいていおばちゃんで、作中で「だから言ったじゃない」という態度をとる。
スパークは意地悪なのだ。


お気に入りは、


・「遺言執行者」
大作家の叔父の遺言執行者になった女性。
叔父の未完の小説を見つけた彼女は、自分で完成させて売ろうと考えるが……


・「警察なんか嫌い」
いなくなった伯母の犬の問い合わせに警察に向かった青年。
しかし、そこで彼は、見に覚えのない事件の容疑者にされてしまい……


・「双子」
学生時代の友人宅に遊びに行った女性。
そこには双子がいたのだが、どうにも不穏なものが感じられ……


・「鐘の音」
村で老人が亡くなっているのが見つかる。
医師が怪しいのだが、アリバイがあり……


・「上がったり、下がったり」
エレベーターで、互いのことが気になる男女。
お互い、相手のことを様々に妄想し……


・「クリスマス遁走曲」
クリスマス前に実家に戻ろうと飛行機に乗った女性。
そこで、副操縦士といい雰囲気になったのだが……


河出版異色作家短篇集(勝手に命名)の今年のトリに相応しい。来年も期待したい。