Les petits metiers

小鳥の園芸師

小鳥の園芸師

尻拭い、硝子割り、皮剥ぎ、さわり屋、首斬人、思索屋、裁き屋、引き止め屋、夢の肖像画家、検閲屋、役立たず等々、性的幻想の作家トニー・デュヴェールは、人間のさまざまな生業(なりわい)を鮮かに描き出す。女流画家アンヌ=マリー・スルシエの独特なタッチが、この奇妙なブラック・ユーモアにあふれた作品に味を付ける。


 収録作品
・「洟浚え」
・「尻拭い」
・「時計読み」
・「硝子割り」
・「皮剥ぎ」
・「もの書き」
・「小鳥の園芸師」
・「さわり屋」
・「跳びのり屋」
・「見張り」
・「裁き屋」
・「検閲屋」
・「身代り」
・「渡し」
・「思索屋」
・「雪だるま」
・「彫り師」
・「首斬人」
・「夢の肖像画家」
・「楽師」
・「医者」
・「役立たず」
・「引き止め屋」

「あくび指南」meets ジュディ・バドニッツ。もしくは異形の『ワークパラダイス』*1


一見してなんだかわからないものから、実在する名前まで並んでいるけど、どれも中身は珍妙な仕事ばかり。


一つ引用してみると、

「洟浚え」
彼は学校の入口に鼻ポンプを据え付け、子供の一人びとりを名前で覚えていた。
おじいさんが話してくれたところによると、昔は洟浚えはポンプなど持っていなかったそうだ。

と言う感じ。
『世にも奇妙な職業案内』*2的な面白みに、生理的嫌悪感と意地悪さが同居している。


遙か遠未来。原型を留めないほど意味も何もかも変形し、名前だけが残った職業や文化。しかし、それらさえもすでに過去のものと化し……なんて、SF的読みをしてしまったり。


どれもこれもグロテスクで、悪い冗談にしか思えない仕事の紹介が続くんだけど、共通して言えるのはノスタルジー
過ぎ去ったものへの寂しさが、不気味で残酷なディティールと釣り合いをとっていて、なんとも言えない読後感を残す。また、妙な優しさもあったりするんだよね。


お気に入りの仕事は、「時計読み」「皮剥ぎ」「もの書き」「さわり屋」「渡し」
中でも「渡し」が最高に好き。