NOT THE END OF THE WORLD

世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション)

世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション)

『博物館の裏庭で』*1の作者による短篇集。

可愛がっていた飼い猫が大きくなっていき、気がつくと、ソファの隣で背もたれに寄りかかって足を組んでテレビを見ている! そして……という「猫の愛人」、真面目な青年と、悪さをしながら面白おかしく暮らす彼のドッペルゲンガーの物語「ドッペルゲンガー」、事故で死んだ女性が、死後もこの世にとどまって残された家族たちを見守ることになる「時空の亀裂」等々、十二篇のゆるやかに連関した物語。千夜一夜物語のような、それでいて現実世界の不確実性を垣間見せてくれる、ウィットブレッド質受賞作家によるきわめて現代的で味わい深い短篇集。


 収録作品
・「シャーリーンとトゥルーディのお買い物」
・「魚のトンネル」
・「テロメア
・「不協和音」
・「大いなる無駄」
・「予期せぬ旅」
・「ドッペルゲンガー
・「猫の愛人」
・「忘れ形見」
・「時空の亀裂」
・「結婚記念品」
・「プレジャーランド」

奇想、と言うほど直球のヘンテコさはないんだけど、どこかずれた世界、認知の中で、登場人物たちはいたって普通に日常生活を送っているため、それを読む我々は不安にならざるを得ない。
全体的に、「え、それで?」という感じで終わる作品が多いんだけど、それが彼らの人生はまだ続く、という余韻を残す。
また、それぞれの作品に、他の登場人物が少しずつ顔を出し、その顔はそれまでと違う一面を見せてくれる。視点を変えれば、その人物の見え方も変わるわけで、それもまた、彼らの人生や可能性を教えてくれる。


お気に入りは、「シャーリーンとトゥルーディのお買い物」「予期せぬ旅」「猫の愛人」あたりかな。