THE FUTURE OF US

6日目の未来 (新潮文庫)

6日目の未来 (新潮文庫)

  • 作者: ジェイアッシャー,キャロリンマックラー,Jay Asher,Carolyn Mackler,野口やよい
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: 文庫
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もしも1996年にフェイスブックがあったなら……。そしてそこに「15年後の自分」が書かれていたら……。不思議なサイトが映し出す最悪な結婚生活を知って、未来を書き換えようとするエマと、高校一の美少女との甘い将来を壊されたくないジョシュ。すれ違いの果てに、現実世界の二人が見つけた恋。90年代のヒット曲と共に綴られるフェイスブック版「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。

甘酢っぺ〜。
いいなぁ、こういう青春……


AOLインターネット100時間無料CD-ROMを入れたら、なぜか21世紀のフェイスブックという、写真がたくさんあるサイトにつながってしまう。そこには未来の自分と思しき写真があるが、どうやらあまり幸せでは無さそう。
プライベートな日常のことをネットに垂れ流しているなんて、未来の自分は頭がおかしくなって、夫に愛想をつかされているのでは?
というつかみはバッチリ。


紹介文には『バック・トゥ・ザ・フューチャー*1とあるけど、それよりも『アフター0*2の「未来の想い出」にかなり似ている。
しかし、こちらはフェイスブックなので写真はたくさんあり、情報も多いので、かなり動的に未来を変えることができる。しかも、それはバタフライ・エフェクトのように波及し、自分以外の人物さえも改変されてしまう。
とは言っても、世界が破滅するようなことはなく、あくまで自分と親友の未来を幸せにしたいというだけで、現在も未来も大波乱は起きない。
未来を垣間見ちゃったから焦燥感が具現化しちゃったけど、将来に対する不安は漠然と誰にもあるんだよね。
何も起きないんだけど、何か起こしたいという、主人公の高校生二人の六日間が瑞々しく描かれ、重大事が起きないというそれ自体が推進力となって、最後まで甘酢な緊張感を保ちながら、飽きさせずに読ませてくれる。
21世紀のネットにおける「今」と、96年の現実における「今」が、何が大切なのか気づき、それぞれ進歩するのも、YA的なお約束とはいえ巧み。


また、同時に、インターネット黎明期の、懐かしネタ満載。
ダウンロード残り97分って!(笑)
当時を知っているはずなのに、今となってはあの世界は半ば異世界だよね。それは彼女たちも同様で、どうでもいい個人の食事のことをネットの載せたり、「友達」が何百人もいたり。


リーダビリティもよく、甘酢と笑いもいい塩梅でオススメ。