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瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集

瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集

日常的現実のひとこまから奇想の世界が現出する。リアルかつ奇妙なイメージに快く翻弄されるうち、存在論的・認識論的な問題にまで思考は駆動されるだろう。近年、世界が「再発見」した異能の作家の短篇集。


・「クヴァドラトゥリン」
・「しおり」
・「瞳孔の中」
・「支線」
・「噛めない肘」

部屋が広くなる薬剤、彼女の瞳の中に暮らす極小の人間、夢を作る工場……など、あらすじを聞くと変な話っぽくて、期待が持てる。
まぁ、確かに変な話ではあるんだけど、そういう展開が読みたかったわけじゃないんだけど、という感じ。


1920年代のロシアというバイアスがシュールな作風を呼んだのか、社会情勢を批判する上でシュールな作風を選んだのかはわからないけど、奇想でありながら、そこには当時の窮屈な生活がはっきりと見られる。
この作品集に限定して語るならば、居住環境の狭さ。
部屋を広くする薬剤を塗ったが、際限なく広がっていってしまう「クヴァドラトゥリン」。瞳の中でせせこましく暮らす人々「瞳孔の中」。ガラスの箱のなかで見世物になる「噛めない肘」。
また、夢もプライベート何ものではないという「支線」にも窮屈さを感じる。


お気に入りは、と言うか、変な話のまま終わったのは「クヴァドラトゥリン」「噛めない肘」かな。