TIMELESS

アレクシア女史、埃及(エジプト)で木乃伊(ミイラ)と踊る (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、埃及(エジプト)で木乃伊(ミイラ)と踊る (英国パラソル奇譚)

〈英国パラソル奇譚〉最終巻

人類と異界族が共存する19世紀英国。伯爵夫人アレクシアは、社交に、〈陰の議会〉に、特殊能力をもつ2歳の娘ブルーデンスの子育てにと多忙な日々を送っていた。そこへ世界最高齢の吸血鬼マタカラ女王からエジプトへの招待が届く。かつて〈神殺し病〉で異界族が消えたその地で、一行は古代より続く恐るべき秘密にふれることに――歴史情緒とユーモアに、人狼殺害事件の謎を絡めた大人気冒険譚、惜しまれつつも堂々完結!

1巻がイマイチだったのに、尻上がりにキャラクター小説としての面白さを増していったという、稀有なシリーズ。それもとうとう、これにて閉幕。


今回の舞台はエジプト……のはずなんだけど、半分過ぎてもエジプトには着かず、事件らしい事件も起こらない。残りページで、エジプトに上陸して、事件が起きて、ちゃんと終わるのか心配になってくる(笑)


改めて考えると、シリーズを通しての陰謀や大ボスみたいのが存在しないんだよね。アレクシアの父親は印象薄いし、狼男も吸血鬼も共存してるし、外国と戦争起こすこともなさそうだし、アレクシアの外へ物語が広がる要素があまりない(その分、キャラクターたちのドタバタやラブラブなバカップルを楽しめるとも言えるんだけど)。だから、最終巻といっても、残念な気はするものの、大団円的なカタルシスが予想できない。


これは、作者が意図していたかどうかはわからないけど、アレクシアの手の届く範囲の物語なんだよね。ある意味セカイ系といえるかもしれないけど、彼女にとってのセカイとは家族と友人くらい。それさえ平穏ならいいわけ。


そのセカイの中で、ベターな未来のために、キャラクターたちが各々人生の選択をするのが、最終巻の見所であり、クライマックス。
だけど、それが、後ろ半分で一気に行われるため、駆け足感は否めない。もう一冊くらい挟んで、タメと余韻を持たせても良かったんじゃないかなぁ。


まぁ、すっかり孫にデレデレ風のアケルダマと、「ダマ?」と「ノー」がかわいいので、全て許しますが。


あと、今だから言えることだけど、タイムボカンシリーズみたいに、毎度動物型巨大メカが出て来て欲しかったかも。


新シリーズもあるようなので、そちらも刊行を期待したい。