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アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)

アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)

続けて出ていたのに止まっちゃったなぁ、と思っていたら、ハヤカワから刊行。

ベルリンを震撼させる連続殺人事件。その手口は共通していた。子供を誘拐して母親を殺し、設定した制限時間内に父親が探し出せなければその子供を殺す、というものだ。殺された子供が左目を抉り取られていたことから、犯人は“目の収集人”と呼ばれた。元ベルリン警察の交渉人で、今は新聞記者として活躍するツォルバッハは事件を追うが、犯人の罠にはまり、容疑者にされてしまう。特異な能力を持つ盲目の女性の協力を得て調査を進める彼の前に、やがて想像を絶する真相が! 様々な仕掛けを駆使して描く驚愕の傑作。

フィツェック作品の特徴は、突飛とも思えるような異常事態の中で展開されるミステリと、すこぶるつきのページターナー
『アイ・コレクター』もそれは健在で、いつにも増してサービス過剰(笑)


エピローグから始まり、章立てとノンブルが遡っていくという構成。だからといって『メメント*1のような作品ではなく、『バットマン・ビギンズ*2的演出といえるかな(?)
サイコによるゲーム仕立ての犯罪や残酷描写は、『セブン』*3や『SAW』*4を想起させる、どこかで見たことがあるようなシーンを自家薬籠中にしている。
例えに映画がいくつも思い浮かぶように、ヴィジュアル先行の展開は過去作同様、抜群のリーダビリティを誇る。感触的には『治療島』*5に似てるかな。


しかし、この作品を特徴付けているのが、超能力者の女性の存在。
彼女は盲目だが、時折、触れた人間の過去が見えるというのだ。その能力で犯人を追っていくんだけど、その扱いが非常に上手い。
超能力を扱った作品で、ここまで巧みなミスリードと、ミステリとしてフェアな作品はあまりないんじゃないかなぁ。
一方で、主人公の不可解な経験は多重人格なのか統合失調症の症状なのか、という不安がこの作品ならではの牽引力になっている。


新生ポケミスの1冊として、十分に楽しめた。