THE BIG YEAR; A TALE OF MAN, NATURE, AND FOWL OBSESSION

ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲

ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲

『ザ・ビッグイヤー』。それは、1年間に北米大陸で見つけた鳥の種類の多さを自己申告制で競う、アメリカ探鳥協会主催の記録会の名称である。仕事も家庭も棒にふり、1000万円以上注ぎ込み、40万キロ以上も飛び回って1年間も『鳥探し』をする競技者・バーダーたちの駆け引き、軋轢、結託、嫉妬―。男のロマン、バカバカしさ、業の深さを爽やかに描いた傑作ノンフィクション。

(邦題の)副題にバードウォッチングとあるけど、厳密にはバードウォッチングとは別物。何種類の鳥を見られるか競う探鳥という競技であり、一日、一週間など期間がある中で、一年間かけて北米大陸を舞台にするのが『ザ・ビッグイヤー』。本書は空前絶後の記録を立てた1998年の記録である。


レアな鳥を追い求めて、海に、山に、森に、ゴミ捨て場に、酷暑の中、極寒の中、嵐の中を突き進んでいく。
探鳥家にはいくつかパターンがあり、ビッグイヤーを狙うような人間は孤高派に分類される。じっと潜伏し、珍しい鳥を見つけたと聞いた途端に飛びかかる。ひどく挑戦的か、競争に対して過敏のどちらかであり、リストがすべて。これって、古本者?(笑)
過去の挑戦者のエピソードで、船にライバルと居合わせ、船酔する相手をつき落としちゃえばいいんじゃね? と回想するシーンが彼らのメンタリティを表している(笑)


メインキャラは三人。
押しもアクも強く、財力とバイタリティを持ち合わせ、以前にもビッグイヤーを達成したことがある、絶対的強者のコミト。
世界的企業の重役を務め、物腰柔らかい紳士のレヴァンティン。
プログラマーとして働きながら挑戦し、いつも金欠な、離婚したてのミラー。


その彼らが、追いつき追い越し、時には協力しながら鳥を探していく。
面白いのは「ヨーイ、ドン!」とスタートがあるわけでも、審判がいるわけでもないため、普通の探鳥家なのか、ビッグイヤーに挑戦しているのかわからないこと。だから、初めの頃は、お互い『よく見かけるアイツは何者!?』と訝し合っている。また、2回もビッグイヤーに狙ったものは誰もいないため、コミトがまた挑戦しているとは思わなかったり、仕事をしながら驚異的な探鳥をするミラーを警戒したり、それぞれの牽制が面白い。それに加えて、ちょっとした冒険もの並みの一大旅程。
渡りを考慮にいれて、効率いいルートを組み立てなければならない。しかし、自然が相手だけに予定通りになるはずもなく、海は荒れるは、難しくない鳥なのに、何故か現れなかったり。


コミトの悪者っぷりと、ミラーの応援したくなる小市民っぷりの塩梅がよく、最後まで推進力が衰えない。はたして、ザ・ビッグイヤーは誰の手に!?
ちなみに、勝っても商品も賞金もないんだけどね。