THE EXPLOITS OF FIDELITY DOVE

フィデリティ・ダヴの大仕事

フィデリティ・ダヴの大仕事

『迷宮課事件簿』*1の作者による、怪盗もの連作集。
あんまり、国書っぽくない表紙ね(笑)

天使のように可憐な淑女怪盗が次に狙うのは――? 手下を操り、完全無欠の計画で大胆不敵にあらゆるものを盗むフィデリティ・ダヴの冒険譚! 〈どうやって盗むか〉のおもしろさを心ゆくまで味わえる傑作短篇全12篇。


 収録作品
・「顔が命」A Face and a Fortune
・「宙吊り」Suspense
・「本物の名作」The Genuine Old Master
・「偽造の定番」A Classic Forgery
・「カルヴァーパリー侯爵のダイヤモンド」The Gulverbury Diamonds
・「貴顕淑商」The Merchant Princess
・「一四〇〇パーセント」Fourteen Hundred
・「評判第一」A Deal in Reputations
・「笑う妖精」The Laughing Nymph
・「ことわざと利潤」The St. Jocasta Tapestries
・「ヨーロッパで一番ケチな男」The Meanest Man in Europe
・「グレート・カブール・タイヤモンド」The Great Kabul

正直、今となっては、トリックは他愛なく、コメディレベルののどかさなんだけど、これがなかなか楽しい。『ルパン三世』の赤ジャケットって感じ?(笑)


フィデリティ・ダヴと愉快な野郎どもが、狙った獲物をどうやって手に入れるかが基本パターン。
怪盗らしく美術品が多いんだけど、会社や評判など、形のないものを盗むエピソードも少なくない。暴力や流血を好まず、それ故、自然と義賊的な性格を帯びていく。彼女のメンもヤサも警察に割れているので、「どうやって盗む」と言うより、「どうやって法の目をかいくぐるか」が強い印象で、コンゲーム的展開のエピソードも多い。
ホームズのように、彼女の冒険は記事になっていたという設定で、一次大戦後の苦しい生活を送る人々の目線と同化し、悪徳企業家をギャフンと言わせる展開に快哉を送りたくなる。


それぞれ特技を持った手下たちは、女王様の役に立ちたいと常に望むという、高度な放置プレイ。同時に、フィデリティが助けるのは女性が多く、「お姉様」と呼ばれる百合展開。また、彼女の服装も仕草もピューリタン的であり、そこにインモラルを感じなくもない。こんな楽しみ方も推奨(笑)


「偽造の定番」「貴顕淑商」「笑う妖精」「ヨーロッパで一番ケチな男」あたりがお気に入り。