PASTORALIA

パストラリア

パストラリア

『短くて恐ろしいフィルの時代』*1備えて予習。

資本主義社会の片隅で、人々は行き詰まり、捻れた現実に溺れていく――。テーマパークで洞窟人のカップルのふりをして生活する男女。ストリップ・バーでダンサーとして働きながら姉妹や叔母を養う男。自己啓発セミナーに触発され、厄介者の妹を家から追い出そうとする兄。逃げ場の無い人生の不条理を、辛辣なユーモアと桁違いの想像力で描き出す欧米で大絶賛の傑作短編集。

 収録作品
・「パストラリア」Pastoralia
 原始時代テーマパークで、洞窟人生活のキャストを勤める男。
 彼は真面目だが、コンビを組む女は気を入れてやっていない。
 そんな中、会社は人員整理を始めるという噂も流れてきて……


・「ウインキー」Winky
 自己啓発セミナーに通い、厄介者の妹を追い出すことを決意する初老の男。
 帰宅し、妹を前にして……


・「シーオーク」 Sea Oak
 ストリップ・バーで働く青年。
 家には、シングルマザーの妹と従姉妹、優しい叔母を養っている。
 ある日、強盗に遭い、叔母が亡くなる。
 金がないながらも、なんとか葬儀をあげたが……


・「ファーポの最期」The End of FIRPO in the World
 想像力豊かな、ちょっとオツムの足りない少年。
 いじめっ子に復讐の計画を立てるが……


・「床屋の不幸」The Barber's Unhappiness
 モテたい床屋。
 そのくせ、女性を見ては、色々と批評していて……


・「滝」The Falls
 村の変わり者。
 ある日、滝壺に流されていく少女のボートを見かけ……


『変愛小説集II』*2所収の「シュワルツさんのために」がよかったにもかかわらず、放っておいたんだけど、これはスルーしててゴメンナサイだなぁ。


異常な、且つ、どん詰りの人生を送る主人公たち。そんな中でも生活を営み、生きていかなくてはならない。
しかも、彼らは金持ちになりたいとか高望みするわけでなく、もう1ランク上の、もしくはこれ以上は落ちたくないために働く。
ダメ人間なんだけれど、笑えないダメさなんだよね。
突飛な設定、突飛な行動なのに、キャラクターは(ダメなりに)地に足をつけているため、バカ正直に頑張っているからこそ、その人生にリアリティがある。
この、まさにバカ正直という言葉がポイントで、彼らはあまりにバカ正直すぎ、も少し要領よく出来ればいいのに、それができないからこそ行き詰まっているのだ。多かれ少なかれ、彼らの世渡りの下手さ加減には自身を重ねられると思う。だからこそ、愛らしくもあり、疎ましくもある。
お気に入りは、予想外の展開を見せる「シーオーク」、半端無いDT力と中2男子な「床屋の不幸」