PIRATE

隻眼の海賊に抱かれて (扶桑社ロマンス)

隻眼の海賊に抱かれて (扶桑社ロマンス)

パラロマではなく、ロマンスの大御所の代表作も読んでみようと着手。
サブジャンル的には、ヒストリカル・ロマンス。

19世紀初頭のニューオーリンズ。農園主の娘ブリスは厩番の青年ガイと恋に落ち、父の承諾なしに結婚。激怒した父は彼女の結婚相手に考えていた貿易商と謀り虚偽の告発でガイを投獄してしまう。ガイは獄中で度重なる暴行を受け、さらに刺客に命を狙われるが、片目を漬されながらも相手を殺害し脱獄した。一方のブリスは男児を出産するが死産と告げられると、件の貿易商と結婚を決意する。だが挙式直前に息子の生存を知ると船で息子に会うために旅立った。その途上で出会った片目の海賊こそ……。

読んでもらえば分かる通り、失笑を禁じ得ない、ベタなあらすじ。
しかし、ベタであるからこそ、作者の力量がうかがえる。


これまでにつまらないパラロマを何冊も読んできたけど、改めてあれは下手くそだったのがわかる。こうして、大御所の作品を読むと、緩急の付け方と言うか、純粋にストーリーテリングが上手い。


男側は、女に裏切られたと思い、身分を隠したまま彼女を抱き、最終的に正体を明かして捨てるという復讐を計画するも、やはり彼女を愛さずにはいられない。
一方、女は、海賊なのになぜか彼に惹かれてしまう。彼の面影があるが、死んだはず!
という前提で、バレるの? バレないの? というスリリングさが絶妙で、それだけで十分に読ませる。
それだけでなく、息子を巡るタイムリミットサスペンス(違う)、貴族の身分となって社交界での二人のニアミス、などロマンスにつきもののすれ違いが幾重にも重ねられて、緊張感を持続させている。
恋敵もねちっこくていい。


エンタメとして完成していますよ。
まぁ、無理に読む必要もないけど(笑)


ちなみに、原題は味気ない。
燃えるような邦題はオリジナルの時もあれば、直訳の時もあります。