CLARA'S GRAND TOUR

サイのクララの大旅行―幻獣、18世紀ヨーロッパを行く

サイのクララの大旅行―幻獣、18世紀ヨーロッパを行く

『サイのクララの大旅行』グリニス・リドリー〈東洋書林


1741〜58年にかけてヨーロッパを巡業したインドサイのクララのノンフィクション。
興行主のヴァン・デル・メールはオランダ人の元船長ということしか分かっておらず、他に記録が残っていない一般人。
また、巡業の様子も日誌があるわけでもなく、ルートやクララの運搬方法などは第三者の目撃情報や状況証拠から推測するしかないので、作者の想像に依る部分が多く、ノンフィクションとしてのパワーは弱いけど、その模様は十分に面白い。


クララは東インド会社の取締役に子どもの時から飼われていたため、人間に慣れていた。
ヴァン・デル・メールがそれを引き取り、誰も(ヨーロッパで)見たことがないサイのグランドツアーを目論む。
はたして、巨体をどうやって運び、マーケティングはどうしていたのか?
クララがタバコとビールとオレンジが好きというのが萌える(笑)


ヴァン・デル・メールは商才があったようで、ポスターを擦り、限定グッズを作り、町々で記念コインの鋳造させ、人気が落ちてくると「クララが死にかけている!」と煽る様子は今と変わらないなぁ。
マリア・テレジアルイ15世も見物している。
また、多くの画家のモデルになることも許可していて、見物料だけでなく、そういうキャラクタービジネスも展開していた。
それまでサイと言ったらデューラー木版画(伝聞によって描かれた)だけが200年間参考にされてきて、クララの興行がヨーロッパに与えた最大の功績は、それを払拭させたこと。

アルビヌス『人体筋骨構造図譜』の背後に描かれているのがクララ。この版画見たことあるなぁ。



ドラマチックなことは起きないけど、ファンタジーの怪物が街にやってくる様、クララの可愛らしさはオススメ。