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いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

いちばんここに似合う人ミランダ・ジュライ〈新潮クレスト・ブックス〉
以前読んだ2作が変な話だったので楽しみにしていた短篇集。

 収録作品
・「共同パティオ」The Shared Patio
・「水泳チーム」The Swim Team
・「マジェスティ」Majesty
・「階段の男」The Man on the Stairs
・「妹」The Sister
・「その人」This Person
・「ロマンスだった」It Was Romance
・「何も必要としない何か」Something That Needs Nothing
・「わたしはドアにキスをする」I Kiss a Door
・「ラム・キエンの男の子」The Boy from Lam Kien
・「2003年のメイク・ラブ」Making Love in 2003
・「十の本当のこと」Ten True Things
・「動き」The Moves
・「モン・プレジール」Mon Plaisir
・「あざ」Birthmark
・「子供にお話を聞かせる方法」How to tell Stories to Children

映像作家ということもあるのか、奇行なのに、鮮やかにビジュアルが思い浮かぶ。
ガーリッシュ特有の気分の悪さはジュディ・バドニッツとちょっと味が似ているけど、イヤ純度はこちらが上か(笑)


息が詰まりそうな孤独。そこから逃れるための奇行や妄想。共感できる妄想から独りよがりな妄想。その妄想が終わってしまうことに対して、逆に不安を感じてしまうから、そこに頼ってしまう。
しかし、ある日、はっと妄想から醒めてしまう。でも、単なる孤独な状況に戻るわけじゃないんだよね。彼女たちには楽しかった日の思い出(妄想)があるから、前進か、少なくとも閉塞感からは抜け出せるはず。抜け出した先がハッピーかどうかはわからないけど。


お気に入りは、
・「水泳チーム」
 川もプールもない町で、老人たちに洗面器で水泳を教えることになった女性。
 これは傑作。 バタフライとか素晴らしすぎ。
 主人公が、結局自分のことしか考えてなのもいい。


・「階段の男」
 寝ていると、ゆっくりと誰かが階段を登ってくる気配がする……
 これは共感できるなぁ。


・「妹」
 既読*1
 友人から妹を紹介すると言われた還暦過ぎの男。
 いつもすれ違いで彼女と会えないが、いつしか妄想恋愛するようになる。
 ついに友人が、家で3人で飲もうと言ってくれて……
 これはいい話(笑)
 予想外のラストながら、しっかり変愛。
 お一人様の老後の備えをしたいものです。


・「2003年のメイク・ラブ」
 十代の頃、影にレイプされるが、それと愛し合うようになった作家志望の女性。
 その影と再会することを待っているが……
 いろんな意味で妄想とファンタジーの境目のない作品。
 そこに現実を突きつけられ……


・「動き」
 父から死ぬ前に、女の愛撫の動きを習った女性。
 気づくと、人生訓にシフト。主人公が勘違いしてる気もするけど。