SINGULARITY’S RING

天空のリング (ハヤカワ文庫SF)

天空のリング (ハヤカワ文庫SF)

『天空のリング』ポール・メルコ〈ハヤカワSF1771〉

人類とAIが融合した〈共同体〉の突然の崩壊により荒廃した世界を立てなおしたのは、統制府が創造した二人〜五人の集団――小群だった。彼らは匂いで会話し、手首のパッドに触れ合うことで記憶や感情を共有し、まるで一人のように行動する。アポロ・パパドプロスもそうした小群の一組だった。二人の少年と三人の少女からなるアポロは、外宇宙探査船の船長をめざし、過酷な訓練を続けていたが……ローカス賞に輝く衝撃作!

リーダビリティよく、つまらなくはないんだけど、なんか深みがないなぁ……
記憶や感情を共有できる複数人による小群(ポッド)によって統治された未来。主人公は五人ポッドで、それぞれの一人称で語られていくんだけど、能力の担当があるにもかかわらず、イマイチ差別化されているように見えないんだよなぁ。
もっと、偏りがないとこの設定と構成が生きてこないと思う。読んだ限りだと、頭が悪いはずの〈力〉担当のストロムだけで十分な気が(笑)。その辺は、精神病質的に描いた『人間以上』*1の方が印象的。
また、シンギュラリティの真実もなかなかいいんだけど、ポッドの世界が描ききれていないから、どうも詰め込み過ぎの感が強い。
そのせいで、気づくと世界を揺るがす陰謀になっていたような軽さ。もう1冊分位あっても良かったんじゃないかな。