CITY OF THIEVES

読了本の感想がたまっちゃたなぁ……

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ〈HPB1838〉

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。ときは一九四二年、十七歳の祖父はドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた。軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。だが、この飢餓の最中、一体どこに卵なんて?――戦争の愚かさと、逆境に抗ってたくましく生きる若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンタテインメントの傑作。

戦争冒険オナニー小説(笑)


命を賭けて卵を探すと聞くと、一見、滑稽に思えるけど、ドイツ包囲下のレニングラードは人肉を食べたと伝えられるほどの地獄。
そこで卵を調達するのは、まさに不可能な任務。しかも、卵探しから思いもよらぬスケールに展開していく。その間にも戦争の理不尽さと残酷さが描かれているんだけど、もう一人の主人公であり、饒舌で下ネタ好きのコーリャの存在が雰囲気を悲壮なものしていない。
また、コーリャだけでなく、野性味あふれる女パルチザンのヴィカ、卵探しを命じるグレチコ大佐、冷酷なナチのアーベントロート少佐など、キャラも魅力的。特に、ソ連とナチの二人の高官は印象的で、理不尽を押し付ける力を行使しながら、ある種の理と筋が通っているんだよね。


最後まで皮肉っぽいジョークを忘れないが故に、戦争の愚かしさが心に残る。
そして何より、ラストのセリフが素晴らしすぎ。あまりに洒落ていて、聞き手である孫の創作かもしれないけど、もうグッと来ますよ。
オススメ。


勝呂先生がなくなったため、今回からHPBは表紙が新装。絵柄は固定しないとか。
HPBの表紙当てできる人っているのかしら?(笑)