The Astronaut from Wyoming and Other Stories

ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ワイオミング生まれの宇宙飛行士 宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

『ワイオミング生まれの宇宙飛行士』中村融・編〈ハヤカワSF1769〉
SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー第1弾は宇宙開発SF傑作選!


 収録作品
・「主任設計者」……アンディー・ダンカン
 ソ連のロケット工学者セルゲイ・コロリョフのあり得たかもしれない人生とソ連宇宙計画を描く。
 ひじょうに読み応えのあり、小説ならでは、といった作品かな。
 コロリョフの人生は史実に沿っているので、ウィキペディアで調べてみるのもオススメ。


・「サターン時代」……ウィリアム・バートン
 ニクソンが失脚せず、民主党政権が続いているアメリカ。
 サターン5型が改良されて、飛び続けていた。


・「電送連続体」……アーサー・C・クラークスティーヴン・バクスター
 物質の電送が可能になった世界。
 それにより、宇宙開発は、そして人間はどう変わっていくのか?
 イマイチ、宇宙開発ものという印象が薄い。


・「月をぼくのポケットに」……ジェイムズ・ラヴグローヴ
 月が大好きな少年。
 ある日、いじめっ子から月の石を売ってやると持ちかけられる。
 苦労して金を工面し、ついに我が物にするが……
 『スカイシティの秘密』*1のジェイ・エイモリーの別PN。


・「月その六」……スティーヴン・バクスター
 異なった宇宙開発を進めてきた六つの並行世界を転位していく宇宙飛行士。
 彼が最後にたどり着いたのは……


・「献身」……エリック・チョイ
 火星探査にやってきた四人は人類初の探査船ヴァイキング1号を調査する。
 その帰り、ローヴァーに隕石がぶつかり、ベース・キャンプに戻れなくなってしまう!


・「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」……アダム・トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション
 アレックスは宇宙人のグレイそっくりの容貌だが、ごく普通の少年。
 しかし、そんな姿だから、常にマスコミに付きまとわれていた。
 彼は筋ジスの天才青年コリンと出会い、宇宙飛行士を目指す!
 SFMで唯一涙した作品。
 再読だけど、展開を知ってるだけに冒頭から涙目(笑)
 アレックスに関するタブロイド紙のいかにもな見出しが度々挿入されるのがポイント。
 荒唐無稽な見出しはスルーするか、あっても苦笑するしかない。しかし、これがラストの感動に大きくつながっていき、最後の見出しはとても無視できない。
 そこには、やはり「いかにも」なんだけど、アレックスの人生を辿ってきた読者の希望が記されている。


それでも我らは宇宙を目指す、という作品ばかり。
「主任設計者」と「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」のためだけでも読む価値あり。あとは「月その六」がお気に入り。